no reason



 実際に食指が動いたとしか言いようが無い――魔がさしたと思いながらも彼を組み敷いた。まだ若い――いや、成熟し切れてない身体に快楽を教え込むようなものだ。
 下肢に手を伸ばし、足を大きく押し広げさせ、下帯を取り払う。柔毛を指先で弄びながら、根元からを掌に載せて愛撫する。
 渇いたままなのかと思えば、先ほどの乳首を愛撫していた刺激で、ほんのりと其処は湿っていた。

「――ッ、ふ」
「どう?渇いたままだったら感じない感触でしょ?」

 ――くち。

 自覚があるのか無いのか、彼は息を詰めながら身体を弛緩させていく。ほんの少しの刺激で持ち上がっている陰茎をやわやわと揉みながら、指先で先端の鈴口を爪弾く。すると、刺激に正直になっている其処は容量を増して行った。

 ――くち、くちくち。

「ね、聞える?この音…」

 わざと音を立てるようにして指先を弾く。粘着質な音が響くのを彼が気付かないはずはない。瞼をぎゅっと瞑っていた彼が首を起すのを見計らってから、足の付け根を押さえ込む。

「んっ」

 急に拡げられたせいで足に痛みを覚えたのだろう。しかし構わずに、足の間で震える陰茎に口を寄せた。

 ――くちゅ。

 口の中に引き入れてから、自分の唾液を使って嘗め回す。そうして上目遣いになりながら、首を上げた彼の表情を見ると、信じられないものを観ているかのように瞳が見開かれていた。

 ――じゅぷ、ぐしゅ。

 濡れた音をわざと聞かせながら繰り返すと、彼は瞳に涙を浮べて眉根を寄せ始めた。

 ――ぞく。

 彼のそんな追い詰められた表情を見て、背筋が震える。佐助はもっと苛めたいような衝動に駆られ、肘で足を押さえながら指と舌先を使って、彼の陰茎を愛撫し続けた。

「っ、あっ、――…っ、んっ」

 擦れているものの、快楽を拾っているのは解る。口の中で反応するのが楽しくなってくるほど、ひとつひとつの刺激に細かく反応しているからだ。

「ふ…な…、んで…――ッ」
「さあ?」

 疑問を口にしている彼をもっと乱そうと手が動く。じわじわと涙を浮かべ、汗を肌に纏わせ始めた彼の、陰茎の奥にある陰嚢を持ち上げる。手で揉みしだくと、こりこりと双玉の存在がしっかりと解った。
 完全に勃ち上がっている陰茎から口を離し、陰嚢を口に含んだ。

「んん…っ、いや…っ」

 此処にきて初めて拒絶の言葉が出てきた。佐助は新しく耳に届いた声に気を良くして、じゅるる、と音を立てて陰嚢を吸い上げた。さらに口の中に引き入れて、舌先で転がすようにして愛撫を続ける。

「――っあ、あっ…いぁ……――ッ」

 びくん、びくん、と跳ねる四肢を押さえつけながら、じゅ、と吸い尽くすようにして口をすぼめる。そのまま口から陰嚢を引き抜くと、そこから後孔への道筋を指の腹で擦りあげた。

「――ヒぃ…ッ」

 咽喉からつめたような音が漏れる。佐助は上体を起して彼の方へと倒すと、自分の体で押さえつけながら、同じ場所を指で擦った。

「うぁ…――ッ、ぁうっ」
「へぇ…ここ、好き?」
「――き、じゃな…」
「嘘だね。ここさ、会陰っていうの。通称、蟻の門渡り。ここってさ、すごく気持いいはずなんだよねぇ?」
「や、やだ…ッ、いや…ッ」

 するすると何度も指先の腹を使って擦りこみながら、自分の腹を押し付ける。すると今度は別の感触に彼が顔を背けた。

「あ、あ、あ…――」
「解る?これ、俺の」
「ううぅ………」
「あんたの触ってるだけでこうなったんだけどさ、責任取ってくれる?」
「え…?」

 くすくすと笑いながら囁くと、責任の一言で彼の瞳が佐助に向けられた。ぐり、と彼の腹に再び自身を押し付ける。すると彼は佐助の顔と、己の腹との間を、交互に見比べた。

「言ってもお子様には解らないか」
「な…ッ」

 揶揄を篭めて言うと、胸の下の彼がカッと怒りに眦をあげた。そんなところに思わず胸が高鳴ってしまう。佐助は俄然、楽しくなって口端を吊り上げると、足を持ち上げて自分の肩に引っ掛けた。

「んっ、ぐ…ッ」
「ちょっと苦しいかな?でも、いい思いさせてやるからさ…」
「え…?」
「凄く、気持ち良いことしてあげる」

 言い様に彼の腰をぐっと持ち上げる。そのまま転がりそうになるのを自分の胸元と足でおさえ、でんぐり返しの要領で下肢を目の前まで引き寄せる。
 佐助の唾液と、彼の先走りで濡れている其処は、既に少しの刺激で震えるようになっていた。

「あんたさ、本当に男初めて?」
「――…ッ」
「こんな風にすぐ我慢汁だすなんてさ…慣れてないと無理なんだよね」
「ぶ…無礼、な…ッ」
「まあ、元々淫乱な身体してんのかもね」

 くつくつと咽喉の奥で笑いながら、舌先を先ほどの蟻の門渡りに滑らせる。びく、と震えた其処に追い討ちを掛けるように、ねっとりと嘗め尽くしていくと、陰茎がふるりと震えた。手で触れてみるとくっきりと血管が浮かんできており、それを撫でるようにして手を上下に激しく動かす。

 ――ぐしゅ、ぐしゅっ。

 勢いを持って動かすと余計に粘着質な音が響いた。佐助は手を止めずに、再び陰嚢と後孔の間を舌先で何度も往復させていく。

「んん…っ、あぅ…ぅ」
「どう?」
「や…ぞくぞく、する…」

 はっはっ、と細かく息を吐きながら彼は身を捩っていく。だが一向に腕の戒めはそのままなので。両腕を上げた格好のままだ。

 ――やらしい身体つきしてんなぁ。

 このまま一気に抱き潰したい気持になってきてしまう。一緒にどろどろになりたいような、そんな衝動に気付きながらも手を止めずにいると、彼の腹の筋肉がぴくぴくと動き始めていた。

 ――あ、達く。

 小さく「んっ」と息を止めながら、彼の身体が細かく弛緩していく。

「イッていいよ?」
「――――…ッ」

 囁くように言った瞬間、ぶるり、と彼の身体が震えた。それと同時に握っていた陰茎から白濁が吐き出され、彼の胸元に降りかかった。
 佐助は残滓さえも絞りだそうとするように敏感な陰茎を掌ですりあげた。

「う、あ…――っ、やめ、て…――ッ」
「嫌だね。まだまだ此れからなんだから」

 ぺろ、と手についた精液を舐め取る。ずるずると力をなくした足が、佐助の肩と腹に圧し掛かってきた。

 ――口吸い、したいけど。

 しかし彼に噛み付かれた手がまだ痛みを忘れてはいない。苦笑しながら佐助は彼の身体を横にすると、ぐ、と後孔に指をめり込ませた。

「んっ、ヒ…ッ、あ……な、なんで」
「何でって、解ってるでしょ?」
「――…ッ」
「此処に俺様のを受け入れてもらう準備」

 ひく、と彼の咽喉が震える。まだ敏感になっている下肢は少し掌を滑らせただけで反応する。後孔に挿し入れた指がぎゅうと締め付けられた。

「あんまり締め付けないでくれる?」
「――…ッ」
「想像するだけで達きそう」

 くく、と咽喉の奥で笑いながら、佐助は何度も指を出し入れし始めた。その度に達したせいで弛緩していた身体が、別の刺激に反応し始める。

 ――ぐちゅ。

 中に指先を二本差し入れて、関節を曲げながら中を探る。何処かに必ずあるはずだと思いながら指先を動かしていると、彼が首を振った。

「此処?」

 ぐり、と指を動かす。すると、ひゅ、と息を飲む。その場所だと気付いて指の腹と爪で何度も中を掻いた。

「ん、っぐ…――っ、は」
「あんたの快い処、やっと解った。思い切り気持ちよくしてあげるから」

 指先を引き抜いた時に、ちゅぽ、と音が鳴った。それだけ強く締め付けられていたのだ――其処に自分のものが納まるかと思うと、ごくりと咽喉が鳴った。

 ――ひた。

「――…ッ」

 ぐすぐすと鼻を鳴らし始めていた彼が、佐助が後孔に自らを押し付けたのに気付いて顔を起こした。と言っても、身体は横向きになっており、片足を持ち上げられているから、横目のままだ。

 ――きゅうう。

 佐助の陰茎の先が彼の後孔を、ぬるぬると往復する。すると後孔が先ほどまでの弛緩を修め、ぎゅっと力を篭めて引き絞られてしまった。

「力んじゃ駄目…ほら、辛くなるだけだよ?」

 ぐ、と身体を進めようとすると、逃げを打ってもがき出す。それを押さえながら佐助は先端を後孔に押し込めた。

「――…っぐ、んっ」
「ほら、力抜けって…」

 ぐ、ぐ、と呼吸を合わせるように押し込めていくと、半ばまで収まりきった。中途半端なままで、腰を浮かせかけると、幸村の身体が急に弛緩し始めた。

「――ッ、う、ぁああっ」
「――っと、やば」

 中のしこり――前立腺に触れてしまったのだろう。ぶるぶると身体を震えさせながら、快楽の余韻に浸る彼に、更に追い討ちをかけるように腰を進めた。

 ――ぐぷん。

「ん…ッ」
「全部、挿入った…解る?」
「あ…」
「あ?」
「あつ、い…――くるし…」
「そう?嬉しいこと言ってくれるじゃない?」

 ふ、と笑みを口元に浮べると、こめかみから汗が滴った。彼は幼いながらも佐助自身の容量を受け入れ、感想を述べてくる。これだけの短時間によく慣らしたものだと自分に胸を張りたくなってきた。
 しかしそれよりも先ほどから、ぎゅうぎゅうと切ないまでに締め付けられる自身が限界を迎えそうになっていた。

「もっと…さ」
「え…」

 振り返った彼は汗と涙で、顔をくしゃくしゃにしていた。真っ赤になっている頬や鼻先が愛らしくて、思わず手を伸ばしてなでてやる。
 すると彼は触れてきた佐助の手が冷たかったからか、自分から擦りよるような素振りを見せた。

 ――なんだろう、この気持ち。

 胸がざわざわとしてくる。佐助は手を引き離すと、ぐっと彼の後孔を――自分を収めている其処を拡げた。

「や…ッ、ヤダ…ぁ」
「嫌じゃないでしょ、もっと奥まで挿れてあげる」
「や…ぁ、ぁっ…――ッ」

 ぐす、と鼻を啜り上げる姿に同情も、良心の呵責に苛まれることもない。それよりも煽られて仕方が無い。
 佐助は彼の拒否の言葉を耳にしながら、腰を強く打ちつけ始めた。がくがくと揺れる動きに合わせて彼の口から嬌声が溢れる。

「ど?気持いいでしょ?」
「あ、あぅ…っ、いたい…いた…――ッ」

 眉間に皺を寄せて口にする言葉に、既に快楽に溺れ始めている印象を受ける。先ほどまでは頑なに口を閉ざしていたのに、揺さ振り始めたら泣き声のような高い声を響かせてくれるのだ。

「痛いだけじゃないよ。すぐ…好くなる。それに…中に」
「は、ぅ…ッ、はや…――ッ」
「中に、出してあげるから…」

 んく、と咽喉が動いた。言っている意味が彼に理解できているかはわからない。しかし、ぐぷぐぷと音を立てる後孔に、只管に腰を打ちつけていくと、触っていない彼の陰茎が震えだした。

「へぇ…?」
「あ、何を…――ぃッ」

 ぎゅう、と彼の陰茎の根元を手で強く握る。痛みに反応した彼だが、既に鈴口からはしとどに涙が零れている。

「こんなに溢れさせてさ……あんた、やっぱり最高の身体してんね」
「う…うそ、嘘だ…――っ」

 がくがくと揺さ振られながらも、目にした自分の反応に彼が首を振る。しかしそうしている間にも、佐助の腰に強い波が訪れた。ぞくぞくとした其れが、開放の予兆だと気付いて、佐助は執拗に彼の陰茎と後孔を攻め立てた。
 嫌だ、嫌だ、と何度も首を振る彼の口からは、飲み込みきれなかった唾液が零れ出す。そして爪で鈴口を掻いた瞬間、びくん、と彼が大きく身体を揺らして精液を飛び散らせた。

「あ…ああ…――…ィ」
「待ってて、直ぐ…中も熱くしてあげるから」

 はっはっと息を乱しながら佐助が身体を折りたたむ。そして彼のひくひくと絶頂の余韻に浸っている後孔に、強く自身を押し込めた瞬間、彼の中に熱い精を吐き出していった。










 押さえることが出来ず、それから何度か彼の中に吐精し、掻きだしては繰り返し、彼の快楽を引き出していった。外の方では勝鬨が響いている。こんな時まで勝鬨かと思わずには居られないが、ひと時、外の様子を忘れたのは言うまでもない。

 ――俺は、この少年に魅入られたのか。

 下肢はどろどろになっており、身体も青臭い匂いに包まれてしまっている。それでも彼を背から抱き締めていると、首筋に香の香りがするから不思議だった。

「気持ちいいな…名前、教えて?」
「べ…弁丸…」

 後ろから抱き締めて座ったままの姿勢でいると、彼は応えた。背面座位のままで果てたのはつい先ほどで、まだぐったりと身体を預けてきているのが、愛しくなってしまう。
 一時でも愛した身体に、情が沸かないとは言い切れない――いや、むしろこの時は連れ去りたいくらいに情が沸いていた。

「まだ元服前?」
「――…」

 問うと、こくり、と弁丸は頷いた。そんな仕種も後ろから眺めているだけなのに、愛らしくて仕方ない。
 肩に顎を乗せて覗き込むと、背を佐助に預けたままで振り返ろうとする。涙に目元は汚れて、何処かぼんやりとしていた。少し弁丸が身体を動かすと、どろ、と彼の後孔から佐助の吐いたものが零れ落ちる。
 伝い落ちるその感触に眉を寄せる彼が、そっと鼻先を佐助に向けてきた。そのまま口付けるのかと思っていたが、すい、と佐助が顎を引いた。

「そっか。いずれにせよ、何処かに落ち延びな」
「え…」

 ぱち、と弁丸が大きな瞳を見開いた。まだ元服前といっても、世間では――戦があれば、もはや彼は元服を迎えている年頃だろう。

「俺様、気が変わった」
「――…」

 くるり、と細い肩を回転させて後ろから抱き締める格好から、正面を向かせる。そして腕を自分の首に廻すようにさせると、弁丸は小首を傾げた。
 正面から抱き合って、足を自分の腰に引き寄せさせると、くったりと力をなくした陰茎が佐助の腹に当たる。
 それを見下ろして彼は頬をほんのりと染めた。

 ――こんなことされて、まだ清純な顔するなんてね。

 何故か引き寄せられて仕方ない。その正体は解らないが、出来れば自分の腕の中に閉じこめておきたい気持ちが強くなってきていた。
 佐助は弁丸の瞳を見詰めながら、そっと手の甲で頬に触れる。そして彼に苦笑しながら囁いた。

「あんたに惚れたみたい」
「ほれ…?」
「気に入ったんだよ。身体もだけど、なんての?」
「――…?」

 小首を傾げながらも、徐々に染まっていく頬が愛らしい。指先で彼の瞼からに触れて、少し寂しい心持になった。

「あんたのその眼…なんだか凄く好きだ」
「――…ッ」
「本当はこのまま連れ去って閉じこめておきたいんだけど、そうも行かないからね。どこぞに落ち延びれば、いつかまた出会うこともあるさ」

 佐助がぎゅっと背を引き寄せて、抱き締めて言うと胸の中の弁丸が身じろいだ。

「此処で…別れる、のか…?」
「安全な場所まで送る。でも俺様と一緒なら、他の奴らに嬲られても文句も言えなくなるから…」

 それは本当の事だ――戦利品のようにして彼を連れ帰ったら、好奇の目で見られるだけだ。そうした目に彼を曝す気にもなれない。それに護りきれるとも限らない。

「だから、今はお別れだ」

 佐助が名残惜しそうに言うと、弁丸は何を思ったのか、両手を伸ばしてきた。まだ微かに震えているのは、余韻が残っているせいだろう。

 ――す。

 佐助の頬に手が添えられ、そして彼の顔が近づく。鼻先が触れ合った瞬間、佐助は顔を背けた。

「駄目だ」
「何故…?好いた相手には、こうすると…世間知らずの某とて知って…」

 ムッとしたように薄い唇が引き締められる。そんなあどけない表情に名残惜しさが消えない――だが、佐助は苦笑しながら告げた。

「あんた、簡単に噛み千切りそうだもん」
「斯様なことはせぬ」
「さぁてね」

 ふふ、と嘲るように笑うと、彼は俯いてしまった。拗ねさせたいという訳でもなかった。でもどうしようもない事実というのはあるものだ。

「どうしてもしたいなら」

 佐助はそっと顎先に手を添えて、彼の顔を上げさせた。敵に身体を拓かせられたというのに、弁丸はまるで全てを受け入れているかのようだった。それよりも佐助に――敵だというのに――好意を持ったようにも見えた。
確かに佐助とて、ずっと以前から繋がっていたような感覚を拭えない相手だと思った。だが今はどうしようもない。

「次に逢う時まで、お預けだ」

 苦笑しながら、つん、と彼の薄い唇に指先で触れたとき、彼が泣き出しそうな顔をしたように見えたのは、錯覚ではなかったと思う。







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