9. 幸村の身の回りの世話も、長期任務が入っていないときには佐助の役目だった。特にこうして、慕い、慕われる間柄になってからは、余計に佐助は彼の元に居ることを選ぶようになっていた。将に「俺のものに触るな」といった様子だったというのに、それに気付くのは幸村以外の者しかいない――すなわち、とばっちりを食らうのはいつも忍隊の面々という事になる。 ほわり、ほわり、と白い湯気の行方を見ながら、幸村が溜息を漏らす。反らした首の先――髪は湯船から外に出ており、佐助が先程から櫛を入れながら梳いていた。 身体が温まって緊張が解れる。すると何度も口から、ほう、と溜息が漏れていく。幸村は指先で湯を弾くと、湯の中で身体の向きを変えた。 「佐助ぇ、もう良いだろう?」 「未だだよ。旦那、ここすっごく絡んでるんだけど…これだけ切っていい?」 「構わん、構わん」 佐助は幸村の長い髪のひと房をつまみ上げて、眉根を寄せていた。幸村は湯船の縁に両腕を引っ掛けて再び背を向けると、揺れる湯波を掬って顔を洗った。 「まさか髪の毛に引火すると思わなかったからね。少しは加減をしてほしいもんだけど?」 「――遠巻きに俺を責めているのか?」 「さぁねぇ〜?でも紅蓮地獄みたいな光景を、早々見たくは無いかな」 「ふむ…――気をつけるとしよう」 ――とぷん。 幸村はそこまで言うと身体を湯に沈める。そして口元まで浸かると、暫くじっとしていた。彼の濡れた髪を手に持ったまま、佐助は常備している苦無を取り出し、しゃりしゃり、と焦げてしまった部分を削り取っていった。 先日行った戦――その際の獅子奮迅振りには、未だに惚れ惚れする。しかし時として幸村の戦い方はあまりにも残酷なようにも見えてしまう。 ――自分は犠牲になっても、活路が開ければ、って…それは無いよね。 自分が生き残ることを考えてくれないと堪らない。死に急ぐようなのだけは――生き急ぐのは止めてほしいものだ。 ――今は俺の存在も考えてほしいなぁ。 おこがましいとは思いつつも、そんな風に感じてしまう。全くの主従関係ではなく、其処に距離を縮める関係の名前が加わっているのだ。せめて自分の事を少しは考えてほしいと思ってしまう。 ざ、と切り取った幸村の髪の一部を流し込み、湯船に浸かる主に――背後からそっと顔を近づけた。 「さてと…そろそろ暖まった?」 「ああ、心地よい位だな。上がるか」 たぷん、と音を立てて幸村が少しだけずり上がる。そうすると彼の肩も、胸も、程よく染まっているのが目に飛び込んできた。 ――こく。 横から覗き込んだ幸村の肢体――それを見つめているだけで、咽喉が上下に揺れ、じわじわと腰が疼いてくる気がする。幸村が湯船の縁に手を添え、そのまま上がろうと、身体を湯から上げかけるのを、佐助は背後から腕を伸ばして押し留めた。 「――?どうかしたか?」 「上がる前に、さ?――ね?」 肩越しに振り返った幸村に、低い位置から微笑みかけ、背骨にそって手を這わせた。すると幸村は急に瞳を泳がせて、唇を尖らせて聞いてきた。 「――するのか?」 「だって旦那、このまま…出来ないままじゃ嫌なんでしょ?」 「それはそうだが…」 つつ、と肩甲骨の辺りから、腰の窪みにかけて手を滑り下ろす。濡れるのを承知で佐助は幸村の背に自分の胸元を引き寄せ、腰の窪みから今度は更に下――臀部を揉み上げるように触れた。 「ん…ッ」 後ろから臀部を片手で割り開くように動かしたり、揉み込むと、幸村は直ぐに身体をびくりと震えさせた。ひく、と反っていく咽喉にもう片方の手を添えながら、自分の胸元に引き寄せる。そうして幸村の肩に顎先を乗せて、耳朶に囁いた。 「湯に入っている時が一番解れやすいんだから、覚悟決めてさ」 佐助の囁き声に、んく、と咽喉を動かして幸村が快楽を逃がす。そして少しだけ跳ね上がった呼吸を正しながら、ふうう、と深い溜息をついた。 「…仕方あるまい」 ――佐助の為だ。 かくん、と肩から力を抜いて幸村が湯の中で腰を落とす。こぽ、と中で水泡が弾けていった。佐助は勢いよく湯から手を引き上げて、自分の頬に手を添えて叫んだ。 「ぎゃー!あんた、軽くそんな優しいこと言わないでよッ」 「俺としてはお前の筆下ろしもしたいくらいだったが…」 「口ばっかり達者になって!」 「ははははは」 肩越しに振り返りながら軽口を叩く幸村の肩を、ぱしん、と平手で叩く。せめてもの反抗だ――だがそれもじゃれているに過ぎない。 佐助は額に巻いていた手拭いを解き、顔を拭うと溜息を深く――深く、じっくりとついた。 「もう…旦那ってこんな人だったっけ?」 「待っておったからな。そりゃあ、少しはひねくれても良かろう?」 べ、と小さな舌が突き出される。それを背後から覗き込んで――腕を伸ばして指先で触れると、幸村は視線だけを上に向けて見上げてきた。 「――――…」 舌先に触れた指の腹を、く、と強く押すと、幸村は少しだけ瞳を眇めてから、ちゅ、と引き入れるように指先を舐り出す。ぞくぞくと佐助の背筋に戦慄をもたらして来る仕種に、佐助は力を込めて彼の肩を抑え、幸村の口から指先を引抜くと、手を滑らせて行った。 「じゃ、始めますよ」 「ん」 耳朶の真横で囁くと、幸村はきゅっと瞼を閉じた。その横顔にそっと口付けてから、佐助はゆっくりと湯に浸かっている下肢へと手を伸ばしていった。 向き合って抱き締めあう二人の間には、湯船を溜めている縁がある。立ち膝になりながら、それを邪魔だと思いながらも湯から浮き上がってしまいそうになる幸村の秘部に手を這わせる。 幸村は佐助の首に腕を巻きつけてしがみ付きながら、熱い吐息を吐き続けている。 こうして湯殿で彼の後孔を解すのは初めてではない。もう既に数回しているだけあって、やっと指先が受け入れてくれるようになった。だが、その先に快楽がなくては意味が無い。佐助は甘美な吐息を漏らす主の後孔を指で探りながら、自身も煽られてしまうのを、必死で堪えていた。 「ん…ん、んっ」 「旦那、やっぱり前も触った方がいい?」 「っ、い…いい…っ」 絶え間ない喘ぎに、耳朶に触れるように唇を寄せて問うと、幸村は自分の腕を湯の中で、たぷん、と動かした。湯の音に混じって、幸村は「いらない」と首を振った。 ――でも、さっきから凄く目の毒なんだよねぇ。 しがみ付く彼の腕は片方だけだ――はくはく、と動く口は、時々佐助の首筋に噛み付いてくる。そして何より、もう片方の彼の手は湯の中の自分の下肢へと向けられていた。 ――旦那ってば、やらしすぎでしょうが。 人の気も知らないで、と微かに思いながら、後孔に潜り込ませた指をゆっくりと擦りこむ。すると幸村が嬌声を上げて肩先に噛み付いてきた。膝立ちになる腰が跳ねて、ざぱ、と湯から出てしまう。それを再び腰に手を宛がって湯の中に押し込めて、佐助は意地悪く声を掠れさせて囁いた。 「でも、自分で触ってるじゃない?」 ――どうせなら、俺様に触らせてよ。 言い様に佐助が片方の手を幸村の――自らの陰茎の握る手に添えさせると、顔を起して「駄目だ」と首を振られた。 「お前に、触れられたら…我慢が」 「いいよ、我慢なんてしないで」 身体を起こして首を振る幸村を宥めるように、後孔の中に押し込めた指先を、く、と折り曲げた。 ――ぐり。 「――っ、ひゃ、っっく」 「え?ここ?」 びくん、と大きく幸村の身体が跳ね、がくがく、と力を失って湯に座り込んでいく。引っ張られるように佐助は上体を起して、幸村を上から覆いかぶさるようにして支える。だが後孔が飲み込んだ指先が、ぐいぐい、と奥まで引き込んでいく。それに反発して指先を引抜こうとすると、内壁の同じ処を何度も擦る羽目になった。 「っ、っ!」 「ここなんだ?」 「ふ…あ、あぁ…や、そこ、もう…」 呼吸さえも覚束ない程にがくがくと身体を揺らし、幸村が佐助にしがみ付く。頭を下に向けて、はーはー、と呼吸を乱している彼の口元から、飲み込みきれなかった唾液が、湯の中に、つう、と落ちていった。 ぬぷん、と湯の中で指先を抜き取り、入り口の辺りを指の腹で撫でながら、佐助は腰が疼いてくるのを止められずにいた。 ――柔らかい。 既に彼の後孔は佐助の指を飲み込めるようになった。それに合わせて、こうして内部を擦っても違和感や痛みではなく、感じ始めている――此処から大丈夫という線引きは難しいが、何より佐助の方が限界になってきていた。 「旦那さ、もう後ろだけで結構、いけるんじゃない?」 「ば、バカを言うなっ」 くわ、と頬を赤らめながら幸村が顔を起す。じわりと滲んでいる汗と涙、それに口元の唾液がてらてらと光って、余計に食べてくれとでも言いかねないように映る。 「でも」 佐助は再び、入り口に触れていた指先を、ぐ、と中に押し込めた。 「ふ…っ」 「もう指、三本目も入りそうなんだよね」 ぐぐ、と指二本をばらばらに動かし、三本目を潜りこませに掛かると、幸村の背が撓った。そして佐助を引き寄せると、ぎゅう、と抱き締めてくる。 「ぅ…――っ、ん、さす…け…」 「気持ちよくなってきた?」 こくこく、と頷く幸村に、可愛いなぁと脳裏で感じ入った。自分よりも一回りも違うのに、どうしても可愛く見えてしまうから不思議だ。佐助は、つぷん、と指を全て抜き取ると、幸村の背を引き寄せて、宥めるように唇に唇を重ねた。表面を擦るだけの口付けが一転して、濃厚な色を含んでいく。絡めた舌先を吸い上げながら離れると、佐助はおまけとばかりに幸村の下唇を、ぺろ、と舐めた。そして強く引き寄せて、耳朶に囁く。 「どうする?」 問うと不思議そうに小首をぶつけて来る。察しが悪いなぁと嘯いてから、佐助は腰に手を滑り下ろして、臀部を緩やかに撫でた。 「この分だともう挿入るけど」 「――…っ」 ぴく、と幸村が反応し、顔を起した。起した顔を正面から覗き込んでみると、幸村は赤くなりながら口を真一文字に結んでいる。 ――こつん。 佐助は自分の額を彼の額に押し付けて、上目遣いになりながら、試しとばかりに伺ってみた。 「ここでする?それとも…やめる?」 「こ…ここは、嫌だッ」 裏返った声で幸村が拒む。やはり直ぐには心の準備も整わないだろうし、初めての場所が風呂場と云うのもどうかと思ってしまう。 ――ここでするのも楽しいには楽しいし、気持ちも良いもんだけど。 くす、と咽喉の奥で笑い、佐助は幸村を湯の中から引き上げるように彼の両脇に手を差し込んだ。 「じゃあ、今回は止めにして…」 ――ばし。 其処まで言うと、急に幸村の平手が額に当たった。何事かと瞳を白黒させていると、幸村は顔を近づけて眉根を寄せて抗議してきた。 「アホ。早う、部屋につれていけ」 「――――…ッ」 ――ざぶっ。 お許しが出たとばかりに佐助は素早い動きで、幸村を湯船の中から引き上げると、あっと云う間に横抱きに抱え上げた。 「了解ッ!」 「…さ、佐助?」 がたがたと佐助は足元の桶を蹴り、彼の上に単衣をばさりと掛けると、人目など一切気にせずにそのまま唇を重ねた。荒々しく咥内を侵され、幸村が足をばたつかせる。 「佐助ッ、せめて着物を…――っ」 「俺様に、つかまってて」 ぎゅっと抱き締めて佐助がそう囁くと、幸村は素直に身体を寄せてきた。まだ濡れた彼の髪が頬に当たるのを感じながら、佐助はばたばたと幸村の部屋まで駆け込んでいった。 幸村の部屋に入り込むとすぐさま褥の上に彼を下ろした。急いできたとは言え、幸村の肌が少しだけ冷えてきている。だが単衣を取り払い、佐助はその上に覆いかぶさった。 「佐助…、少し、落ち着け…」 「落ち着いてなんていられないって」 褥の上に仰向けになりながら、幸村が佐助の肩を押す。だが佐助はそれを押し込めながら、ぐい、と幸村の閉じようとしていた両膝を割り込み、大きく開くと、すぐさま自分の身体を滑り込ませる。そうして下肢を固定しながらも、佐助はしきりに幸村の首筋や、鎖骨のあたり、胸元と、忙しなく口付けて愛撫を繰り返していた。 「こんな旦那を前にして、落ち着いてなんていられないよ…ッ」 「逃げはせぬから…ッ」 「折角お許し出てんのに、逃がす筈ないでしょ」 ぐ、と腰を押し付けて佐助が幸村を掻き抱く。むき出しの幸村の下肢に、佐助の衣が触れるが、双方共既に硬くなっているのが触れた瞬間に解った。ぐりぐりと触れられる刺激に、ぶるる、と幸村が腰を震わせる。 「ぅ、あ、っ……ッ」 咽喉を仰け反らせて快楽を散らしている幸村は、眉根を辛そうにきゅっと引き絞っていた。それを間近で見つめ、佐助はぐっと幸村の腰の下に腕を差し入れて持ち上げた。そして目の前に彼の押し広げた下肢がくるように足を割り開く。 「あ…ッ、佐助…そんな風にッ」 「ああもう…旦那…もう、挿れてもいい?」 「え…――ッ」 全て拡げられてしまった羞恥に、腕を伸ばして股間を隠そうとする手を、佐助はやんわりと掴みこんで阻みながら、彼の秘部に指先を触れさせた。 先程湯の中で散々解しただけあって、其処は直ぐに佐助の指を飲み込んだ。ひく、と幸村の背が撓りだすことに、ぞくり、と佐助の腰が戦慄を覚えた。 「大丈夫だよね、これだけ解れてたら…」 「ちょ、待て…、待て、佐助ッ」 「待てない」 ぐ、と佐助は自分の前を寛がせると、既に怒張していた自らの陰茎を宛がった。そして濡れ始めていた先を、幸村の後孔に擦りつけて行く。ぐいぐいと入り口の辺りを濡らしていると、幸村がいちいち反応して震える。それがむしろ余計に佐助の目には扇情的に映って仕方なかった。 「いいよね、もう挿れるよ…ッ」 「や、だからッ!」 ぐ、と力を込めると幸村が佐助の胸に手をぶつけて来る。抗議していると解るほどに、ぱしぱし、と叩かれてしまい、佐助はその手を止めようと掴みこんだ。 「待たせないでよ…」 「だから、その…」 「何?早く…早く言って」 叩く手を纏めて掴みあげられて、幸村が口篭る。手首を片手で纏めて彼の頭上に持っていくと、ぐっと引きあがった胸元に、ごくん、と咽喉が鳴った。既に勃ち上がった乳首が、形を誇示して其処にある。 ――すげぇ…胸、むじゃぶりつきたい。 ぺろ、と渇いていく上唇を舐めていると、幸村がわなわなと口を戦慄かせ、自棄になったように叫んだ。 「お前も脱げッ」 「――…え?」 膝で佐助の腰を挟み込んで、がんがん、と蹴ってくる辺り、乱暴だとは思うが、佐助は纏め上げた手を解いた。すると、自由になった手で幸村は佐助の帯を、が、と解いてしまった。 「俺も、お前の肌に触れたい。だから…んッ」 全てを言う前に佐助は上体を沈み込ませて口付ける。歯と歯がぶつかりそうなくらいに唇を深く重ね、上顎を舌先で擽る。すると、佐助の身体の下で幸村が腰を動かして身を捩った。 ――くちゅん。 つい、と離れてみると絡まりあった舌先が濡れた音を立てる。はあはあ、と呼吸が乱れている。だがそれは口付けだけでなく興奮からの乱れでもあった。佐助は片手で幸村の手を取ると、自分の胸元に当てさせた。 「――――っ」 「それなら、存分に。好きなだけ触って」 「佐助…」 どくどく、と幸村の手に鼓動が伝わっていると思う。徐々に手と佐助を交互に見てくる瞳から、それが伺えた。佐助は幸村の足の間に身体を滑らせたまま、ばさ、と上衣を剥ぎ取った。そして再び彼の胸に自分の胸を近づけるように、ぐっと沈み込む。 「俺様の全ては旦那のものだから」 「――…っ」 ほわ、と幸村の眦に朱が上る。そんな風に赤面する彼に――三十路を過ぎているというのに、乙女のような印象を受けてしまう。佐助は嬉しくなって、ふふ、と口の中で微笑むと、弱い耳朶に息を吹きかけながら囁いた。 「ね、一緒にさ。気持ち快く、なろうよ」 「ぅん…――」 瞳を涙に潤ませた幸村が頷く。彼の頬の上に、ぽたり、と汗が落ちたのを見た瞬間、佐助はぐっと腰を進めていった。 後孔に押し込めた陰茎がぎゅうと締め付けられる――その感触に眉根をひそめて耐えていると、幸村が胸を上下に動かして呼吸を繰り返す。 初めての圧迫感に慣れようと、ぎゅっと眉根を引き絞って、ふうふう、と呼吸を繰り返す仕種がなんとも心地良さそうだった。 「ん…――ッ、ふ、…っ」 「大丈夫?」 伺いを立てると、幸村はようやく焦点を合わせて佐助の方を見やった。そして、んっく、と咽喉を動かしてから、掠れた声で「大丈夫だ」と告げてきた。 「すっごい…旦那、俺の飲み込んでるの解る?中、凄い熱いよ」 佐助はぐっと自身を飲み込んでいる後孔の縁を、指でくるりと示すようになぞった。縁は圧迫に少し膨らみあがっている。それを知らせるような動きをすると、幸村が今にも羞恥で泣き出しそうな顔をした。 「それを…言うなら、お前のだって…――っ」 熱いじゃないか、と反論してくる。だがそんな彼の声や、仕種が、今の佐助には強い刺激にしかならない。途端に下肢がぐっと反応を示してしまった。 「っう、あッ!」 「ふー…旦那、急に煽らないでよ。此処で出しちゃうかと思ったじゃない」 「いきなり大きくするな、馬鹿者ッ」 ぎり、と佐助を飲み込んでいる場所が余計に広がって、幸村が泣き出しそうになる。力の入りきらない手で、佐助の腕をばしばしと叩いてきた。 「だんなぁ…」 「ん…?」 「顔見て、していい?」 「う…っ、そ、それは…ッ」 ぐぐ、と入り込んだままで上体を押し込めると、幸村が内部の擦れに「ん」と声を漏らす。そして「恥ずかしい」と顔を背けようとしてしまう。 「恥ずかしいの解るけど、俺様のことも見ててくれていいからさ。だから、旦那が気持ちよくなっていくところ、全部見せて」 「――ッ、は、恥ずかしいわッ」 「それでもさ…もう、全部、くまなく見せて」 「んっ」 つい、と腹の間で揺れている彼の陰茎を指先で辿る。すると其処は既にしとどに濡れている。指先で先走りを掬い上げるように動かすと、幸村は上目遣いになりながら睨んできた。 「ね?」 宥めるようにして額や頬に口付けていると、ようやく彼は頷いた。に、と佐助は口元を吊り上げて、彼の両膝の裏に手を宛がうと、ぐう、と押し開き、そのまま強く腰を動かし始めた。 「あ、ああ…――っ、ひ、……っ」 いきなり始まった穿ちに突き上げられ、幸村ががくがくと身体を震わせる。口から零れる嬌声を聞きながら、下肢の動きを早めたり、緩めたりをしていく。 「ゆっくりがいい?それとも、早く?」 「あ、あぅ…そ、そんなの…――」 がくん、がくん、と揺さ振りながら問いかけるが、幸村は首を振った。ぐちゅぐちゅと絶え間ない粘着質な水音が、淫靡な雰囲気を濃くしていく。 「直ぐに解るようになるよ、旦那。でも今日は…」 「ひゃ、あ、ぁああああッ!」 先程指で確認した彼の内部を、ぐりりと腰を回して探し出すと、幸村の身体が一層跳ね上がる。そしてその場所だけを狙って、立て続けに突き上げていった。 「快い処だけ突いてあげる」 「あ、あふ…ッ、う…ん、んッ」 瞳をぎゅっと瞑っていた幸村が、ひく、と咽喉を震わせた。それと同時に弛緩する身体が強張る。 「はっ、――――っ」 声にならない声を発して、吐精する幸村の後孔が、ぎゅうと強く佐助を締め上げていった。その刺激に耐えられず、程なくして佐助もまた精を放っていった。 →10 100323~100330/1000401 up 終わらなかったorz |