Hot,warm,and sweet Christsmas:イヴのお話 仕事が終わると、定時で元親が駆け出していった。 「お先ですッ!」 挨拶を返す余裕もなく飛び出していった元親を見送りながら、佐助は腕をぐんと伸ばしてから小十郎のデスクに向った。 観てみると小十郎のデスクの上では、ころん、と身体を丸めて――胡坐をかいて腕組をしたままの政宗が、すうすう、と寝息を立てていた。 ――うちの旦那とは比べ物にならないな。 幸村はもっと寝相が悪い、と思いながらも小十郎に書類を渡す。それに眼を通してから、小十郎がかけていた眼鏡を外した。 「猿飛、そろそろ行くか?」 「そうですねぇ…あれ?」 答えながら、ふと政宗のデスクの上の一角に緑色の服が見えた。首を伸ばして積み上げられていたファイルの影を覗き込むと、其処にはファイルに寄り掛かって眠っている元就がいた。 「ちょ…元親主任、忘れもの…ッ!」 ぎゃあ、と声を上げそうになると、小十郎が首を振って否定してきた。徐に彼は立ち上がると、自分のキーケースを取り出して中を見せた。 すると其処には二枚の緑色の葉っぱが入っている。 「昼に、長曾我部から預かったんだ」 「何でまた?」 「さぁなぁ…ただ、元就を少しでも驚かせたいって言っていたからな」 ――なんか企んでるんだろ。 ふふ、と笑いながら小十郎が帰り支度を始める。流石に今日は皆がいそいそと帰ろうとする気配が色濃い。 「そういうお前は?」 ――今日は幸村は留守番か? 今日一日、姿が見えなかったことを小十郎は気付いていたようだ。佐助は口元に笑みを作りながら「俺も驚かせたくて」と答えていく。誰を、という処はあえて隠してみた。 朝に既に慶次の元に幸村を預けて来ている。慶次は佐助の思惑を知っていたお陰で、驚きもしなかった――むしろ、忙しさもピークだったようで「手伝って」と幸村を戦力として迎えてきたくらいだった。 「おい、お前ら、起きろ。そろそろ行くぞ」 「nnn…あと5分〜」 「――っハ!」 ぱち、と眼を開けた元就が辺りを見回す。元親の姿がないことに、一瞬だけ瞳を見開いたが、直ぐに昼のことを思い出したのだろう――小十郎の腕によじ登り始めていた。 だが政宗はまだ寝ぼけている。仕方ないとばかりに小十郎は彼を両手の中に収めてから、自分の胸ポケットに入れた。 「なんか…子ども一杯のお父さんみたいですね」 「――俺、まだ未婚なんだけどな」 「さってとっ!行きますか」 ぼふ、とダウンを着こんで佐助が先を歩く。その後に続きながら小十郎は後ろから佐助の頭を、ばし、と一度だけ叩いていった。 了 →4 091225/100101up |