drops





 はあはあと荒く息を吐き出しながら、露天風呂の縁に乗り上げた幸村を背後から抱き締める。まだ彼の後孔には自身が収められており、一人だけ縁に乗り上げた幸村は腰を浮かせた。

「さすけ…抜いて、くれ…」
「どうしようかな…」

 ごくん、と幸村の咽喉が音を立てる。縁に乗り上げ、四つん這いになったままの彼がそのまま地面に落ちないように腰を支える。佐助は幸村の言葉を聞きながらも、腰にあてた手を強く自分の方へと引き寄せた。

「うぁ…ッ」
「旦那ぁ、足、広げて」
「な…ッ、そのような…」

 片腕で腰を支えて、有無を言わさずに片腕で足を広げさせる。後ろから挿し込む位置は変わらないが、腰を落としている彼にしてみれば不安定だろう。

「や…やだ、佐助。こんな…」
「大丈夫だって。誰も来ないよ。ま、来てもどうせ旦那のやらしい姿しか見れないんだけど。ほら、其処の柱に両手でつかまって」
「え?」
「動くよ」

 言われるままに天井を支える柱に幸村が両手を添える。佐助は下から突き上げるようにして彼の後孔に腰を打ちつけ始めた。下から穿たれる事に幸村が歯を噛み締めていく。

「っくぅ…ぅ、ぁッ!」

 ぎしぎしと柱が音を立てる。佐助の腿までしかない湯は振動に合わせて激しく跳ねた。
 柱につかまる手に自然と力が篭っていく。もしこれを離してしまえば――足元を縁につけているとはいえ、加重は佐助に支えられているせいで後ろに傾いていく――そうなれば、支えを失って湯の中に落ちてしまう。だがしがみ付いているせいで自由に動けない。

「は、っ、ん…――ッ」

 ぎりぎりと歯を食いしばりながら与えられる感覚に耐えていく。先程達したばかりの身体は何処も彼処も敏感になっており、佐助が動くたびに震えて仕方ない。

「――っ、すけ、ぇ…ッ」
「ゴメン、もう少しだから…」

 ばしゃばしゃと跳ねる湯の音に合わせて、ぐちゅぐちゅと濡れた音が重なり合っていく。それを耳にしているだけで羞恥で頓死しそうな程だ。それにこんな処に誰かが来たらと思うと気が気じゃない。
 それを想像すると身体にぎゅうと力が入った。すると背後で動いていた佐助が、は、と息を強く吐き出した。

「――旦那っ、きつい…ッ!」
「ん――…ッッ」

 ぐ、ぐ、と腰を打ち付けられた瞬間、じわっと内部が熱く爆ぜた。それでも佐助は全て絞り出すように、ぐ、ぐ、と腰をうちこんでくる。

「は…ぁ、あ、…佐助ぇ、あつ…ぃ」
「ぅん、――…っは、気持ち良い」

 ぎゅう、と後ろから抱き締められて幸村は腕の力を少しだけ緩めた。すると肩に佐助の顎先が乗り上げてきて、頬に口付けられる。ちゅ、ちゅ、と啄ばむようにしてキスをされながら、足を支えられていく。

「あの、な…?」
「うん?何、旦那…」
「この格好、いい加減恥ずかしいのだが…」
「ああ…そだね。これじゃ、子どもに…」
「わああああ、みなまで言うなッ」

 幸村が顔を手で覆いながら足をバタつかせる。それに対して軽く笑いながら佐助は湯の中を移動した。そして縁に幸村を下ろすと同時に、ずるりと自身を抜いていく。

 ――ぐぷ。

「ん…ッ」
「あ、凄っ、溢れてる」

 抜き払った瞬間に、岩の上にぽたぽたと零れていく精液を見下ろしながら、佐助は手を伸ばして湯を桶に掬うと、静かに幸村の肩から掛けていった。そうしていくと徐々に汚れた部分が流されていく。白濁が流れていくのを見送ってから、佐助は立ち上がって持ってきていたバスタオルを手にした。そして幸村に掛けてやると、慌てて彼は立ち上がろうとする。

「も、もう…大丈夫だから」
「何言ってんの?立てる?」

 立ち上がろうとして、がくがくと膝が笑っていることに気付いた。佐助が腕を首に掛けて持ち上げると、びく、と幸村が身体を震わせた。

「え…――…ッ」
「ぁ、あ、…み、観るな…ッ」

 震えた幸村の身体を見下ろしていくと、彼はぶるぶると震えながら――羞恥のせいだろう――耳まで赤くなっていく。
 腕を佐助に掛けた格好で横から覗くと、幸村の内腿から、つう、と白い線が出来ていく。流れないようにと身体に力を入れているのは明白だったが、幸村の努力もむなしく、ぽたぽたと岩の上に染みを作っていく。

「ふ…ぅ、う、…ッ」
「これ、俺様のだよね?」
「っ、佐助ッ!な、何を…ッ」

 腰を支えていた手を、幸村のタオルの中に潜り込ませる。身体を覆っているバスタオルの合間から手を差し込んでみると、硬く彼の臀部に力が篭っていた。それを容赦なく、ぐ、と臀部を割り開くようにして触れると、だらり、と白いものが落ちてきた。それと同時に幸村の背が、ぶる、と大きく震える。

「へぇ…やらしいなぁ…。そか、旦那いつも自分で処理してんだよね?」
「え…――」

 たら、たら、と重さを持って落ちてくる液体の感触を、幸村は眉根を寄せて耐えている。それを横から眺めながら佐助の胸に、じわじわと沸き起こってくる感情があった。

「して見せて、って言いたいんだけど、俺がしてあげる」
「――…ッ」

 ――つぷ。

 言い様に指先をもぐりこませると、ぎゅう、と幸村の後孔が佐助の指先を締め上げた。横目で彼を見れば、半ば怒っているようにした唇を噛み締めて佐助に非難の視線を送ってくる。

「此処は厭?」
「わ、解ってるなら…」
「じゃあ、つかまってて」

 ひょい、と佐助は幸村を横抱きに抱き上げる。幸村を横抱きにすると、触れている肌がしっとりとしていて心地よい。

 ――温泉効果かな?

 そんな事を考えながら、サンダルに足をつっかけ、佐助は階段を上り始めた。歩くたびに振動が伝わるのだろう――幸村は、わ、とか、あ、とか細かく声を立てていたが、階段を上りきる頃には佐助の首元にしがみ付いていた。

「旦那、旦那…浴場はいるから」
「う、うむ…」

 こくこくと頷く彼を見下ろして、小さく額に口付けると、幸村はぱちりと瞼を押し上げた。ドアに手をかけると、きぃ、と音が立つ。そして中から熱された空気が触れてきた。
 やはり中の方が外よりも暖かいのは明白だ。
 佐助は幸村を横抱きにしたままで中に入ると、周りを見回した。更に眼を凝らして脱衣所の方も見るが、人影はない。聞こえているのは、ざああ、と湯が溜まる音ばかりだ。

「誰もいないみたいだよ?」
「それは、真か…?」

 抱き上げられた幸村が頬を赤らめて俯く。流石にこんな処で立てなくなっている姿は視られたくないのだろう。

 ――湯中りしたとか、色々言い訳はあるんだけどね。

 佐助はそんなことを脳裏で考えるが、あえて彼には告げずにすたすたと洗い場の方へと足を向けた。洗い場の椅子に、よいしょ、と座り込むと幸村が腿の上に座り込むような形になる。宥めるように何度も、ちゅ、ちゅ、とキスを繰り返しながら、幸村の背骨をさらりと撫で下ろした。

 ――びく。

 くっきりと浮き上がっている背骨を業と指先で辿る。だが幸村は外とは違って今度は声を堪えているらしく、力を込めて佐助にしがみ付いてきた。

「旦那ぁ…いいよ、声出したくないなら、俺様に噛み付いてても」
「でも…――」
「イイって。旦那以外見る相手なんていないんだし」

 軽口を利きながら手を伸ばしてカランを動かす。桶に溜まる湯を加減してると、幸村は瞳を左右に動かして悩んでから、は、と口を開いて佐助に擦り寄った。

 ――はむ。

 柔らかい幸村の唇の感触が鎖骨に当たる。くすぐったさを感じながら、背に流れる幸村の髪を纏め上げる。

 ――綺麗な筋肉。

 髪を纏め上げると、ふと佐助の視界に鏡に映った幸村の背が見えた。彼は気付いていないだろうが、佐助の鎖骨に噛み付いているせいで、洗い場の前の鏡に背中から全て映っていく。

 ――いっそ喰らい付いてしまいたい。

 佐助は、ぺろ、と自分の下唇を舐め上げた。そして浮き出している背筋をなぞり下ろし、幸村の臀部を両手で割り開いた。

「ん…ぐぅ、ぅ…」
「入り口、解る?ちょっと膨れて…腫れてるみたい」

 指先でふにふにと後孔の縁に触れて、指の腹で撫でていく。円を描くようにして、くるくると動かしていると、幸村が足を動かした。

 ――もう一回くらい、したくなっちゃうな。

 佐助は鏡を見つめながら、自身もまた昂ぶってくるのを感じていた。膝に乗せている幸村の足が、佐助の股間に触れてくるのも、ゆるやかな刺激になる。
 下腹がずくずくと疼いてくるが、それよりも目の前で――鏡越しになっている幸村の処理をするのに興奮してしまう。

 ――くに。

 ゆっくりと指先を後孔に差し入れ、ぐ、と開く。そして中指を中に入れてぐるりと内部を擦り上げた。

「んん――ッ」
「っ!」

 小さな呻きなのに、幸村の声はこの浴場に響いていく。その音に驚いて彼は、がり、と佐助の鎖骨に歯を立てた。痛みに自然と身体が揺れる。それに気付いて幸村が顔を起した。

「あは…旦那、吃驚した?」
「済まぬ、痛かったであろう?」

 幸村は即座に口を離すと、指先で其処を撫でた。可愛らしい仕種に佐助は気をよくしながら、ぐりり、と再び中を抉った。

「あっ!」
「凄いねぇ、どんどん出てくる。どれだけ俺様の搾り取ったのさ?」
「や…ぁ、うっ…――」

 掻き出しながら、時々湯で流し、内部を抉り続ける。時々幸村の快い場所に当たるのか、息を詰めたような吐息が漏れてくる。佐助はそんな彼を見下ろしながら、どくどくと下肢が疼いてきていた。

 ――頃合かなぁ。

 ぺた、と幸村の背に片手を添えて、耳朶に囁きかけた。

「ね、視て?」
「え?」

 促がすように顎を幸村の背後――佐助の目の前の鏡に向けさせる。

「ほら、映ってるの」
「――――…ッッ!!」

 振り返った幸村が、ぐわあああ、と肌を朱に染めていく。今の今まで鏡の存在など忘れていたであろう彼は、口をぱくぱくと動かしてみせた。だが言葉にならずに、瞳を白黒させていく。

「やらしいよねぇ…俺の吐き出したので汚れてて、ぐちゃぐちゃだ」

 佐助はぐっと臀部に添えた手を自分の方へと引き寄せた。すると腹に当たる自身の陰茎と、幸村の肌が触れ合う。ごつ、と硬い感触を伴って幸村には伝わったのだろう――今度は口を真一文字にした幸村が、そろそろと自分と佐助の腹の間に視線を向けた。

「――ッ!」
「あ、ごめん。気付いた?」

 ――気付くように業としたんだけどね。

 そんな風に考えながらも、ぐり、と自身の陰茎を彼の腹に押し当てる。すると幸村は濡れた髪から、ぽたぽた、と雫を落としながらも、じっと下肢を凝視してきた。

「佐助、お前…なんと破廉恥な…」
「旦那だって口ではそう言っても、好きなくせに」

 唇を尖らせて佐助は言うと、徐に幸村の陰茎を握りこむ。そして奥のもったりとした陰嚢も掌で包み込んで、ずるん、と擦り上げた。すると外側にまだ柔らかさを残したままだった幸村の陰茎ががっちりと硬くなっていく。

 ――旦那も感じてるんだねぇ。

 ぺろ、と下唇を舐めていると、幸村が汗と湯気で濡れた鼻先を手の甲で拭った。

「う…――んっ」

 くちゅん、と互いの陰茎を重ね合わせて、指先を間に滑り込ませる。そして。ずるりと下から扱きあげると、幸村は片手をおずおずと添えてきた。もう片方の腕は未だに佐助の首に掛かっている。

「擦るだけだから、ね?」
「もう…い、挿れるな、よ?」
「了解」

 瞳を泳がせながら幸村もまた手を重ねていく。佐助の手に、幸村の手が絡まり、するする、と形を確かめるようにして互いの熱を確かめ合う。
 はふ、と幸村が吐息を吐き出す。

「あと、もう一回湯に入りたい…」
「はいはい。後でね」

 甘えたな声を出す幸村に頷きながら佐助は手を動かし始める。すると、ぱたぱた、と互いの肌から汗が零れ落ちていく。

 ――熱くて、気持ちいい。

 佐助が小さく囁くと、同じように幸村も頷いていった。
汗だけでなく、温泉の蒸気に肌を蒸されながら、互いの熱を重ね合わせていった。







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100523 up まだ続くんです。最初の体位は乱れ牡丹みたいな感じ。