Don't stop baby 濃い情事の匂いをありありとその場に残して、深く口付けた。唇を離すと、小十郎がゆっくりと政宗の足を抱え上げたまま、自身を引き抜く。 「ん…――」 ずる、と引き抜かれる瞬間に、内壁が擦られて敏感になった場所が再びうずくような感じがした。 右足だけを小十郎の肩に乗せたまま、額にかかった髪を掻きあげると、はぁ、と溜息を漏らす。 「小十郎…――」 「なんでしょうか」 まだ上下に激しく揺れる自分の胸を落ち着かせて、政宗は仰向けになったままで彼に問うた。 「お前、俺にぶっかけたいとか、思わないの?」 「は?」 あられもない姿のまま、仰向けになっている政宗がぽつりととんでもない事を言ってのけた。思わず小十郎の目が点になる。すると政宗は身体を――上半身を起こして、指先を合わせるとたどたどしく云う。 「いや…なんか、さ…――こう、めちゃくちゃにしたいとかよ…」 ――思わない訳? 上目遣いで聴かれ、小十郎は目線を反らしたくなる。まだ情事の直後で、彼の頬から眦が微かに桜色になっている。北の育ちのせいで白い肌が、余計に陶器のように滑らかに見えて、再び触れたい衝動に駆られてしまう。だが、それよりも政宗の云ったことに、どう反応したらいいのかと思案してしまった。 「興味がお有りで?」 「一応、俺も男だから。俺だったら…したいと思うかなぁ…って」 「――何処でそんなの覚えてきたんですか」 彼の好奇心に、その出所を疑う。予想はついているが、あえて聴くと政宗は口を噤んだ。 小十郎は、こほ、と咳払いをして言葉を変えて再び聞いてみる。 「政宗様、激しいのがお好みなので?」 「好みとかじゃなくて…お前は満足なのなーって」 「満足しておりますとも」 ――他でもない貴方様を抱けるのですから。 襟を正して身支度を整え、再び膝を寄せて政宗の元にいく。すると待っていたかのように、政宗が肩を寄せてきて唇を強請る。それを受けて自分の胸元に引き寄せると、政宗は俯きがちに呟いた。 「でもよぅ…」 「どうしても、と仰るなら政宗様の意識が吹っ飛ぶまで何度でも」 「――…ッ」 素肌のままの肩に両手を添えて、彼の左の瞳を覗き込みながら聞くと、ぱちり、と瞬きをした。 「どうします?」 鼻先に聴きながら口付け、眦に指先で触れると、瞼を伏せていく。だが再び瞼を開けた政宗は、小十郎の表情をじっと見上げるとバツが悪そうに、shit! と呟き、赤くなりながら唸った。小十郎は楽しそうに微笑んでいた。 「――手前ぇ、楽しんでるだろ?」 「ええ、まぁ」 「このスケベ!」 ばし、と政宗が小十郎の額を叩く。だが彼は猫にパンチを食らったくらいの感覚なのだろう。くすくす、と笑うだけだった。 「伊達に十歳も先に年取ってませんので」 そう云われると返す言葉も無い。それに今までは本気じゃなかったのかとも疑いたくなる。 「じゃあ…」 好奇心に任せて、政宗はふと思いつくままに口にした。 「今度、中に出せよ」 恥ずかしい気もしたが、なんとか云ってみる。すると小十郎は余裕の笑みのまま、解りました、と応えた。そして、泣いてもやめませんから、と付け加えていく。 ――取り返しの付かないこと言ったか? ふと、そんな風に思ったが、やってみなくては解らない。政宗は、ふん、と鼻で笑うと小十郎の胸に身体を預けていった。 了 2009.07.09.Thu |