Cheer!cafe. vt



 些細な刺激にも震える身体が愛しくて、それに「顔が見えたほうがいい」と云う幸村の要望に応えて正面から抱き合う。
 足を大きく開かせるだけでも恥ずかしがって瞼を閉じてしまう彼に、ぐっと上体を折りたたんで顔を寄せてから、鼻先に向って息を吐き出した。すると幸村は擽ったそうに瞼を押し上げる。その様子を見つめながらも、そっと後孔に己を突き立てる。びく、と腹の筋肉が動いたのが解ったが、佐助はそのまま自身を押し込めていく。

 ――ず、ず…

 静かに納めていくと、幸村が「ぷは」と息を吐いた。どうしても挿入の瞬間に息を詰めてしまうのは変わらないらしい。

「辛くない?旦那…」
「んっ、だい…丈夫」

 途中まで納めたままで、はふはふと息継ぎをする幸村に、額を押し付けて問う。幸村はうっすらと瞼を押し上げて、んく、と咽喉を動かした。
 佐助の肩に置いていた腕を、ずる、と延ばしたかと思うと、そのまま首を抱えるようにしてしがみ付かれる。佐助はそんな彼の鼻先に軽くキスを落とした。

「少し、動くよ?」
「ん…うご、いて…っ」

 ごく、と幸村の咽喉が動く。そんな姿を見ていると下肢の熱がはちきれそうになるのは仕方ない。互いに紅潮した顔をしているに違いないけれど、そんなのは今のこの現状の幸福に比べたらどうでも良かった。
 ゆさ、と軽く試すようにして動かしてから、佐助は徐々にその速度を速めていく。

「――っ、ぁ、んっ、んっ」
「は…――っ」

 小刻みに揺れる身体を見下ろしながらも、幸村の半音高い声を聞く。それだけでじんわりと襲ってくる快感に酔いそうだった。何度も何度も腰を打ちつけていると、幸村が喘ぐ声の合間に佐助を呼んだ。

「さ、さす…――…さ、佐助…っ」
「なに?どうしたの?」
「うぅ…す、すこし……す、少しだけ…ッ」
「少し?」

 がくがくと彼を揺さ振りながら、言わんとする処を反芻する。すると幸村は、ぎゅう、と両膝を寄せるようにして身体を縮めてから消え入るような声を出した。

「――ぃ、いたい…っ」

 ぴた、と身体の動きを止める。そして繋がっている部分に指先を這わせると、幸村が小さく「あんっ」と可愛らしい声を立てた。

「旦那…今の、もう一回」
「や……何を言うかッ!」
「すっげ可愛い声だったんだもん。って、それ処じゃないか」

 ぱかん、と幸村の拳が佐助の頭に降る。軽い痛みはあるものの、涙目になりながら見上げてくる幸村は可愛らしいものだ。
 佐助はベッドサイドに手を伸ばしてごそごそとツールを探る。直ぐに目当てのものが手にぶつかったが、それを取り出したときに幸村が「ひゃああ」と素っ頓狂な声を上げて真っ赤になったのは気付かなかった振りをした。

 ――ぎゅうう。

「――…っ、んなっ!あんまり締めないで」
「そんな…こと言われてもッ!」
「散々慣らす時に使ってるってのに…」

 佐助が手にしたのはピンク色のローションだった。だがその中にはほんの少しの液体しか見えない。傾けても指先に滑るくらいだろう。

「あ…あ〜…もうローション使い切っちゃったね」
「んっ、じゃあ…我慢、する…――」

 ん、と咽喉を動かして唾液を飲み込み、幸村が佐助の肩に手を掛けた。真っ赤になりながらも、はふはふと吐き出す吐息が熱い。

 ――あんまり痛い思いはさせたくないなぁ。

 佐助は視線を廻らせて、ふと出しっぱなしのテーブルの上に気付いた。そして抱え揚げていた幸村の足をぐっと開かせると、自身をずるりと引き抜く。

「って、あ、いいもの発見」
「ふ…っ、――っ」

 ぶるりと幸村が震えて、無くなってしまった圧迫感に足を閉じようとしていた。だが動けずに手足を投げ出している辺り、そそられてしまう。

 ――色っぽいなぁ…。

 膝を立てて手を伸ばしてから、それを手にし、再び先程の位置に戻る。上から見下ろす幸村は薄っすらと瞳を開いて、さすけ、と小さく呼びかけてきた。
 伸びてくる腕に引き寄せられて唇を寄せる。導きいれるように開かれた足の間に、そっと身体を滑り込ませて、再び自身を後孔に押し付けた。

 ――にゅる

 佐助自身の熱さに震えた身体が、今度は別の感触に震える。

「ひ…っ、あ、な、何?冷たい…っ」
「んー…直ぐに解るよ」

 首を起そうとする幸村を押し留め、佐助は手にしたものからしきりに液体を掛ける。そしてそのまま指先で彼の後孔を押し広げるようにして撫で、潜り込ませていく。
 すると幸村の体温に温められて液体から甘い香りが漂ってきた。鼻につく甘ったるい香りに、幸村がひくりと頬を引き攣らせる。

「っあ、まさか…シロップ…――っ」
「そのまさか。チョコシロップ使ってみました」

 ぱっと幸村の目の前にチョコシロップのパッケージを見せると、彼は紅くなりながらも涙目になってきていた。先程ケーキにかけて食べていたものだ。

「馬鹿…者ぉ…食べ物は…――っ、んあぁっ」

 ――ぐちゅん。

 シロップの滑りを借りて挿入りやすくなったそこは、容易に佐助自身を飲み込んだ。そのまま息を継がせぬように、ぐちぐちと音が響くのを聴きながら、強く抜き差しを繰り返していく。

「あ、あ、…………ッ、あっ、ぅん……」
「俺様が全部舐め取ってあげるから、ね?」

 幸村がしがみ付く処を探して彷徨わせる腕を取り、ぐっと胸を密着させる。そして耳元に囁くと、幸村は「馬鹿者」とだけ答えていった。










 朝になっても部屋中甘ったるい香りに包まれていた。窓を開けても中々チョコレートの香りが拭えない。
 その中で幸村が汚したシーツを前にして居た堪れないように瞼を落とした。

「あ〜…また買い替えかな。この前は旦那が日の丸…」
「――ッ!」

 くあ、と顔を起こした幸村が、湯気を立てそうなほどに真っ赤になる。その様子に可哀相になって、コーヒーを淹れたカップを持って側にいくと、肩を引き寄せて口付けた。

「ごめん、でも旦那のこと好きだから別に責めているわけじゃなくて」
「すまぬ…」
「そうじゃなくて、俺様、今すっごく幸せなんだけど」

 こつん、と額を押し付けると、幸村は擦り寄るようにして身を寄せてくる。そして「シーツを買いに行こう」と言って来た。

「汚したら、俺が今度は贈るから…」
「じゃあ、汚さないようにする工夫してみる?お風呂とかさ」
「な…何をッ!」

 佐助が笑いながら言うと、幸村は口をへの字にして反論したが、最後には耳元に「好きだ」と告白をくれた。
 佐助はもう一度彼を強く抱き締めると、世界一大好き、としつこいくらいに繰り返していく。幸村がどんどん紅くなっていくのに満足して、二人でシーツを買いに出かけていった。


 happy sweet valentine!



110224 up もだもだ!