おかえりなさいだんなさま3 がこーん、と鈍い音が響き渡る。それと同時に幸村が激しくその場に崩れ落ちた。 「うおおおおおお、おやかたさばあああああああっ」 叫ぶ先に綺麗に並んだボウリングのピンは微動だにしていない。それもその筈で幸村の放ったボールは見事にレーンの横に落下していった。いわゆるガーターだ。 「はいはい、旦那、あんまり力まないの」 「しかし…先ほどから一度も当たらず…」 「あんたは力みすぎ。これくらい力抜いて」 崩れ落ちた幸村の背後から、佐助が彼を立たせる。そして手にボールを持つと、ひょい、と放った。 「あ」 ――ガララン。 軽い音を立ててピンは全て倒れた。吸い込まれるようにしてボールはレーンを走り、モニターには「ストライク」の文字が点滅している。 「ね?これくらいの力加減でいいの。フォームはきれいなんだから」 「しかし…どうしたらそのように上手くいくのか…」 幸村は悩む素振りを見せている。そんな彼を見下ろしながら、佐助はかけていた眼鏡をひょいと上げた。 「旦那だったら出来るって。ね?」 「うむ…やってみる」 幸村は戻ってきた赤いボールを手に、ぐ、と力を込めた。そして再び「うおおおおおお」と雄叫びを上げて突進していく。その背中を見送りつつ、佐助は「明日は筋肉痛だな」と自分の右腕を揉みながら呟いた。 今、二人が来ているのはボウリング場だ。なぜボウリング場にいるのかと言えば、一週間後に迫った幸村の会社の慰安会の練習のためだ。 「佐助ぇ、特訓だ!」 「はい?」 帰宅してきたばかりの幸村が、佐助の顔を見るなり、大声で告げたのはそんなことだった。今までボウリングをしたことが殆どないという幸村に付き合って、結局こうして彼の特訓に付き合っている。その話を聞いた時には、作っている途中だったシチューが、ぐらぐらと煮立ちそうになったくらいだ。 ――だって闘志を燃やす原因がさぁ… ガコーン、と再びガーターに陥り、うおおおおおお、と叫ぶ幸村の背中を見つめながら嘆息する。何でも会社の慰安会の後には食事会もついているらしい。しかもボウリングの順位で賞品も出るというのだ。 もしかして賞品を自分にくれるとか、と思った佐助は瞬間にして笑顔を作った。しかし幸村に言わせると、同僚に馬鹿にされたからだという。馬鹿にされたというよりも、勝負だと持ちかけられたとのことだ。 「うおおおおおおおおおおお、このような為体…お館さまに顔向けできぬぅぅぅ」 「だから肩の力抜けばいいんだけど…旦那、そろそろ休憩しようか」 「佐助ぇっ!」 がし、と肩を掴まれる。そして前後にがくがくと揺さぶられた。 「どうしてお前はそうも簡単に行えてしまうのだ?コツは?」 「コツって言われても…俺様なんて小手先だけだし」 「これでは勝負に負けてしまうではないか…」 「勝負、ねぇ…」 ぐうう、と歯噛みする幸村に佐助は天井を見上げた。そして「あ」と声を上げる。すると何か妙案でも浮かんだのかと、幸村は揺さぶる手を止めた。 「さっき、俺様が手取り足取り腰取りしてフォームは教えたでしょ?」 「う…うむ!」 「それは綺麗なんだよ、だからさ…あとは旦那の勝負心に賭けない?」 「賭け…?」 くすりと笑いながら、そっと幸村の鼻先に人差し指を向ける。そして弾いてから佐助はボールを手にして、すたすたとレーンへと向かった。 ――ひょい。 フォームがどうとか言うわけじゃなく、佐助は本当に軽くボールを投げる。それなのに今のところ一度も外さずにストライクだ。 ガラララン、と見事な音が鳴り響くのを背後で聞きながら、佐助は振り返って笑顔で幸村に言った。 「俺様と賭けよう、ね?」 「それが上達に繋がるのならっ!」 売り言葉に買い言葉――幸村は思い切り拳を握りしめながら、佐助の提案に乗ってしまう。そして彼が承諾してから佐助が提案した内容は、幸村を必死にさせるには充分過ぎるものだった。 休日をボウリングの特訓に費やしつつ、いつも通りに出勤する。そして明日は土曜日という日までは穏便に過ごしていった。それでも暇を見つけてはボウリングの特訓に余念がない。明日もまた練習に行こうかと幸村が意気込みながら、自宅のドアを開けた。 「ただいま…?」 中に入ってすぐの玄関に、一つの紙袋が置かれていた。なんだろうかと思いつつも、奥ではシャワーの音がしており、佐助が風呂に入っていることが分かった。 ――なんだろうか。 ごそ、と紙袋を開いてみると、はらりとメモが落ちる。それを拾い上げてから、幸村は「ひゃああああ」と声を上げた。 メモには【これ着て御飯に来てね。着なかったら御飯抜き】と書かれている。 一日、いや一週間しっかりと働いた自分に酷い仕打ちではないかと思う。しかしそのメモの下には【罰ゲームです】とも丁寧に書かれていた。 ――確かに、これまででガーターを出したのは数知れず…。 ごく、と咽喉が鳴る。空腹に耐えられるものは幸村にはない。空腹と目の前の恥辱なら、空腹を満たすことをとる。幸いなことに、今の佐助は入浴中だ。 さっさとこれを着てしまってから、何食わぬ顔で食卓についていた方がいい。彼の職業柄というか、嗜好的にこういった類のものを着るのは初めてではない。 ――まぁ、家に籠っているようなものだし多少のお遊びに付き合うくらい、某とてやぶさかではないが…。 そっと階段を上り、自室へと向かう。幸村は二階の部屋を使っているが、佐助は一階だ。ほとんどを一階で過ごすので幸村にしてみても、こんな時くらいしか二階に上がらない。 そして自室に向かってから、紙袋の中身を取り出し、幸村は何度も躊躇いながらそれを着る羽目になった。 「はぁ〜、旦那まだかなぁ…」 風呂からあがり、そのままの格好でリビングに向かう。バスタオルを腰に巻いただけの格好で、また熱い身体を冷ますように、ふう、と吐息を吐いた。 時計を見れば既に時間は幸村の帰宅時間だ。しかし未だに呼び鈴が鳴る気配がない。どうしたものかと思いながら、佐助がリビングのドアを開けようとした瞬間、きい、とドアが開いた。 「――…ぃ!?」 誰もいないと思っていたドアが静かに開き、背筋が一瞬凍りそうになる。しかし直ぐにそこから覗いてきた手と顔に、ホッと胸をなでおろした。 「なんだ、旦那。もう帰ってたの?おかえりなさい」 「た…た、だ…いま…」 「ちょっとどうかした?」 顔と手元だけを見せて、ドアで身体を隠した幸村が、こちらを窺い見ている。何かあったのかと駆け寄ると、ぺたん、と彼はその場に座り込んだ。 「って…あっ!」 「佐助ぇぇぇぇ、着方が解らぬぅぅぅぅ」 ぺたりとしゃがみこんでいる幸村は、べそべそと泣き始めてしまう。そして佐助の視界には、いつぞやのメイド服を着た幸村が居た。 ――そりゃ、着て、って書いたけど! まさか承諾して着てくれるとは思ってもいなかった。座り込んだ際に、ふんわりとスカートが膨らんでゆったりと床に広がる。其処で幸村は困ったように裾を掴んでいた。佐助は同じようにしゃがみこみながら――しかし腰にバスタオルを巻きつけただけの姿だ。多少は気遣いながら片膝をついた。 そっと彼の髪に乗せられているカチューシャを外しながら、宥めるようにしてこめかみに唇を寄せる。 「何の着方が解らないって?」 「が…がー…――」 其処まで言いながら、幸村はきゅっと唇を引き結んでしまった。俯きながらスカートの裾をしっかりと掴んでいる。 ――何を隠して? 裾を掴んでもぞもぞと動く彼に、ふと足を隠しているのだと気付く。佐助は腕を彼の脇の下に差し込んで腰を支えると、間近でもう一度こめかみにキスしてから、一気に引き上げた。 「うわっ!」 一緒に立ち上がる。しかし案の定、幸村はスカートの裾を掴んだままだ。足元を見れば、しっかりと白いストッキングに包まれている。前回、佐助が履いたニーソは、勢い余って幸村によって破かれてしまっている。その為に今回は新調したものだ。 「ちゃんと着れているね。旦那、ありがとう」 「いや…そうでもなくて…、その…この、タイツのようなものが…どんどん捲れて下がってきてしまうのだ」 「うん、だからガーター付けないと」 「――ッ!」 「え、まさかガーターの着け方が解らないとか?」 「うううううう」 「嘘だろーん?」 幸村はそこまで言うと顔を佐助の裸の胸元に押し付けて隠してしまった。手で触れてみるとしっかりとメイド服を着れている。佐助が前回着ていた通りに、パニエも履いているようで、スカートはふんわりとドーム型になっていた。難を言えば、腰の部分のリボンが曲がっているくらいだ。 ――見ていないようで、実はちゃんと見ていたんだねぇ。 くすくすと咽喉の奥から笑いが込み上げてきてしまう。前にメイド姿で幸村に迫った時には、背中のファスナーを外す手さえ震えていた。女性ものの服だというだけで真っ赤になっていたのに、ちゃんと指定通りに着てみせてくれる幸村に、思わず可愛いなぁと思ってしまう。 だがそれとは別に、少し意地悪したい気持ちにもなってしまう。 「じゃあさ、俺様が教えてあげるから」 「え…」 ぐい、と肩を押して彼の前に膝立になる。すると幸村が佐助を見下ろす形になる。その場所で両膝を床について見上げながら、幸村の腰を掴みこんだ。 「ほら、裾捲って」 「え…な、なんで?」 「俺様が直々にガーターベルト、付けてあげる」 「な…っ!お、教えてくれるだけでいいからっ!」 幸村は真っ赤になりながら、裾を掴んだ。しかし佐助も引かない。幸村の腰を掴んだまま、じっと彼を見上げる。佐助が「ガーターは?」と聞くとエプロンのポケットに入っているという。其処を探って中から取り出すと、幸村は「ひゃあ」と声を上げて瞼を閉じた。 「旦那、目、開けて」 「しししししかしっ!」 「見てなかったら意味ないでしょうよ?」 「うううう」 態と幸村の前でベルトを広げて見せる。まだ躊躇している幸村をじっと見上げていると、彼はゆっくりと掴んでいた裾を持ち上げ始めた。しかし手が、かたかたと震えている。 捲りあげられる先には、細い彼の足がある。しかし筋肉がしっかりついているので、太腿はそれなりの弾力もある。其処に見えるのは、用意していたガーターストッキングの、先がくるくると捲れてしまい、食い込んでいる腿だった。 「――…ッ」 ごくん、と思わず唾液を飲み込んでしまう。きつく食い込んでいるのは、どうにも目に毒だ。しかしガーターベルトを広げて彼の足もとに向ける。 「ほら、旦那ってば。これに足入れて」 「う、うむ…」 ゆっくりと両足をベルトの中に入れるのを見てから、すすす、とゆっくりと滑り上げていく。態とゆっくりと行いながら、幸村の足に触れる。その度に小さく、びくびくと震える姿が可愛らしい。 「ほら、腰まで上がった。これで後はこのストッキングの裾を挟むだけ」 「そ…そうか。なれば、後は…」 「って、え?ちょっと旦那?」 ガーターベルトを持ち上げてから、ハッと気付いて見上げる。まだ裾を持ち上げたままの幸村がびっくりして瞳を見開いた。先ほどまで半泣きになっていた彼の眼元は、涙でくっきりと濡れていて、大きな瞳をより大きく見せている。 その瞳が、ぱちぱちと揺れているのを見上げながら、佐助はガーターベルト毎、彼の腰骨のあたりを掴んだ。 「なんで下着そのままなのっ?」 「え…だ、だってっ!」 言われてから、かああ、と彼の顔が赤くなる。用意周到とばかりに彼に下着まで用意していたというのに、幸村はそのままの男性物の下着を履いている。 「さすがに其処までは着替えられぬぅぅぅ」 「ダメっ!ちゃんとレースの、女物用意したでしょ?完璧に着こなしてほしいから…」 「破廉恥ぃぃぃ」 「仕方ないなぁ…それじゃあ、先ずはこれ脱ぐ?」 「え?」 真っ赤になって裾から手を離した幸村は、自分の顔を覆ってしまう。腕にスカートの裾の感触が降ってくるが、手にはしっかりとベルトの感触がある。佐助は片方の腕で彼の足を開かせながら、つい、と下着を引き下げ始めた。 「まだ留めちゃう前で良かった。ねぇ旦那?今から脱がしてあげるから」 「え…ええええええ?」 「どうせだから、このまましちゃう?」 すすす、と腰から彼の下着を引き下げ始めると、がくがくと幸村の足が震えてきていた。そのまま震えが止まらないのか――羞恥心とか、緊張とか、いろいろ綯交ぜになってしまっているに違いないが――幸村は両手を佐助の肩に乗せた。 「俺様もまだ服着てないしさ…ね、旦那は着たままでいいから…しよう?」 「え…だが、その…」 「後でたっぷり御飯、食べさせてあげるから」 そう囁くと、ぐっと幸村の腰を自分の方へと引き寄せた。そしてまるで米俵を担ぐようにして彼の身体を自分の肩に持ち上げる。 は、は、と興奮し始めた身体が、小さく吐息を漏らし始める。佐助に担ぎ上げられた幸村は、途中まで下着を引き下げられたままで、足の自由が効かないだろうに、じたばたと足を動かして抵抗して見せた。 ――ばたん。 佐助が性急になりながら、自室のドアを開ける。そしてそのまま幸村を自分のベッドの上に下ろすと、スカートの中に手を差し入れた。 「ひゃっ…っ」 ふわりと裾から外気が入り込み、幸村が身を竦ませる。そんな彼の足を、膝を持ちながら横に大きく広げさせた。 ――ふわ。 スカートの裾が広がる。たぶん幸村からは見えていないのだろう。だが佐助の眼には幾層にも重ねられたパニエが広がり、その奥にはストッキングが食い込んでいる腿が見えている。 ――やばい…えろい…。 息がどんどん上がるのが解る。佐助は手を動かしながら、幸村の男性用の下着をずり下ろしていく。その合間に身体を伸ばして彼に乗り上げると、そっと顔を近づけた。 「ね、旦那…優しく、抱いてあげることが出来ないかも」 「それは…」 「俺様、ちょっとありえないくらい興奮してんだよね」 ――触って。 言いながら自分の中心に手を誘導させると、幸村は真っ赤になって固まった。だがすぐにゆっくりと手を動かし始め、そして自分から足を広げるように動かしていった。 「罰、ゲーム…なのだろう?」 「うん?」 「それでも構わぬ…だから、その…」 ――あまり酷くはしないでくれ。 小さく囁きながら、幸村が佐助の背に手を伸ばしてくる。彼の掌の感触を背に感じながら、佐助はゆっくりと幸村の唇を塞いでいった。 背中に幸村の手の感触を感じる――明るいところでは絶対に見せない。でもこんな風に絡み合うだけの時には、彼に触れさせている。 佐助の背にはケロイド化した傷があり、酷い有様だ。だから出来るだけ、幸村には見せないようにしている。だけどそんなのも構うことが出来ないくらいに興奮していた。 何度も何度も背に幸村の手が、指が滑りおちていく。 ――くちゅ、ちゅぅ。 「んんっ、んぁ…っ」 スカートの裾の中に顔を突っ込んで、引き下ろした下着はそのまま放り投げて、彼の中心を口の中に引きいれる。舌先で全体を舐めながら、指先で括れたカリの部分を弄る。 「ふぁ…っ、っん」 「旦那ぁ、気持ちいい?」 「う…ん、――っ」 べろん、と先まで一気に舐め上げてから聞くと、幸村は背をしならせながら、びくびくと身体を揺らした。それを途切れがちになる吐息のままで指先で愛撫を繰り返す。 「ん、んっ…っ、は…っ」 「ちょっと、待ってられる?」 「え…」 ごそごそと佐助は幸村のスカートの――エプロンのポケットを探った。幸村は自分でつけられなかったものを全部そこに押し込めて来ていた。だから有るだろうと踏んで探ると、目的のものはすぐに手に絡んできた。 「佐助…も、早く…」 服を乱すでもなく、ただ吐息を熱く吐いている彼が可愛くて堪らない。気持ちよさげに瞳を眇める姿に、佐助の腰もまたずんと重くなっていった。 「足、上げて」 んく、と乾く咽喉を動かして言いながら、佐助は幸村の右足を持ち上げた。そしてすかさずもう片方も持ち上げ、すい、と何かを引き上げた。 「な…なに?」 「旦那、自分で触ってみる?」 ――ほぅら。 にやりと笑いながら幸村の手を誘導する。それは彼のスカートの中だ。それも先ほどのガーターベルトの金属が、ひやりと手の甲に当たる。しかしその先に――陰茎を出したままで、下に撓ませているのはレースの感触だ。ハッと気づいて幸村が下唇を戦慄かせた。 「履いて、もらっちゃった…」 「や…ぅ、あ…っ」 「ね?レースの上から此処を擦ったらさ…気持ちいいんじゃないかな?」 上体を幸村の方へと傾けて、ちゅ、ちゅ、と音を立てて彼の舌先を吸い上げる。それと同時に股間のあたりでは、女物の下着を彼の陰茎にまで伸ばして擦り合わせた。 「んん――っ」 「ほら、ね?」 びく、と幸村の身体が震えた。それに合わせて、ギュッと瞼を引き結んだ彼が、何度もびくびくと身体を弛緩させていく。そして佐助の手には、どろりとしたものが触れてくるのが解った。 「早かったね…」 「そ、んな…こと…――」 はふはふ、と呼吸を繰り返す幸村の額や、頬に口づけながら、佐助は幸村の膝裏に手を滑り込ませた。そしてぐっと引き上げると、然程解してもいないのに、後孔に自分のものを付きつけた。 ――ぐ。 「――ッ!佐助…まだ…っ」 「ごめん、もう無理」 「ダメ…だってっ!」 ぐぐ、と力を込めながら佐助が腰を進める。それに合わせて幸村が歯を噛みしめながら、しがみつく様にして腕を伸ばしてきた。 「背中、引っ掻いちゃって、いいから…」 「あ…っ、ぐ…んっ」 ぐ、ぐ、と何度も腰を進めると、全て収まる。そうしてから動くのをやめて、幸村の胸元に顔を埋めた。 「あ…っ、は…――っ、無理、させるな」 「ごめんね。あんまり可愛くてさ…」 間近で腰が溶け合うのを待つ。そうしながらも、幸村がびくびくと身体を震わせるのが解った。それに佐助とて微動だにしない訳ではなく、軽く中を擽るようにして腰を振っていた。 鼻先が触れ合うと、お互いに汗をかいているのが解った。それを感じながら、唇を合わせてから、佐助が腕をぐっと幸村の頭の横に突っ張った。 そうすると身体を二つに折りたたまれて、圧迫感が増すのか、幸村の後孔がぎゅうと締め付けてくる。 「っく…っ、後で…一緒にお風呂入ろうね」 「う…ん…――っ」 「そしたら、また…ガーター着せてあげるから」 態とそう言うと、幸村は「勘弁してくれ」と呟いた。しかし次の瞬間から、揺り動かされる衝撃に、声らしい声は発せなくなっていった。 幸村の会社のボウリング大会は来週だ。 一通り情事を終えた後に、再び風呂に入ってからメイド服を着せられた幸村は、最初ほど抵抗も見せずに夕飯に有りついていた。 それを眺めながら、佐助もまた大根とイカの煮物を齧る。 「なぁ、佐助…?」 「うん?」 「何故、メイド服なのだ?」 ぱくぱくと食べる幸村は既に三杯目を佐助に強請ってよこした。いつもなら止める所だが、今日ばかりは止めずに渡した。すると幸村は美味しそうに白米を口に入れてから、ホウレンソウのクルミ和えを口に放り込んだ。 「だって旦那、ガーターばかりだしたでしょ」 「そうだな」 もっきゅもっきゅ、と可愛らしい咀嚼音を出しながら、幸村がクルミ和えを食べつくしていく。佐助は缶ビールを傾けながら、口ごもりながら告げた。 「だから、ガーターのキングって感じで…ガーターベルトプレイってのも良いな〜て思ってさ」 「それだけか?」 「まぁね」 す、と幸村の箸が止まった。だが少し思案してから、再び彼は箸を動かし、秋刀魚の竜田揚げを口に放り込んだ。 「――本番はなるべくストライクを取って見せる」 「へぇ?」 「ストライクを取ったら、今度は…っ」 「今度は?」 ぐ、とそこまで言ってから口ごもり、首元からふわりと肌の色を染めていった。それを見つめながら、佐助が待っていると、信じられないお誘いの文句が飛び出してきた。 「その…や、優しく…」 「優しく旦那を頂いていいの?」 「――っ、ぐ!」 ごっくん、と咽喉に嚥下する音が響く。それくらいに焦りながらも佐助に誘いの文句を告げてきた幸村に、思わず苦笑するしかない。 「それってさ、俺得以外なんでもないんだけど」 「そんなことないからなっ」 言い張る幸村に微笑みかけながら、佐助はとりあえず今も目の前にメイド服で座っている幸村を、再び抱きしめてしまいたい衝動に駆られていた。 「旦那って、ホントに可愛い」 「心外な言葉だ」 「大好きって意味だよ」 「だったら問題ないな」 もぐもぐと頬を膨らませて食事をする彼を見ながら、これもネタになるかな、とかすかに仕事のことも考えながら、佐助は頬杖を突いた。そしてゆっくりと時間を掛けて、二人で食事を楽しんでいった。 了 111010up 色んな方々に捧げる一品 |