側にいると感じさせて 足音をどたどたと立てながら廊下を歩く音が響く。この足音の主は誰かなど直ぐに解るというものだ。佐助は手元に持っていた忍具を纏め上げると、飛び込んでくるであろう相手を予想して背筋を伸ばした。 「佐助ッ!還っているのなら、還ったと言いに来いとあれほど…ッ」 ばしん、と戸が開かれたと思って直ぐに、幸村が両手を広げたままの格好で、佐助を見つけて叫ぶ。間近で聞くには彼の声は大きすぎる――佐助は、耳の穴に指先を差し入れて、はあ、と溜息をついてから弁明を始めた。 「だって俺様疲れてたし、夜更けで旦那は涎垂らしながら寝てたし」 「何時のことだそれは!」 どか、と幸村は佐助の間近に座り込んだ――といっても周りには広げた忍具が転がっていて、二人の間に短い距離を作っている。 「ええと…一昨日?」 「――…ッ」 佐助が面倒くさそうに言うと、ぐっと幸村は咽喉を詰まらせてから、すっと立ち上がった。そしてそのまま戸の方へと踵を返してしまう。 「あ、あれ?旦那…?」 「もう良い。お前など知らぬわッ」 がちゃがちゃ、と忍具を纏めて二人の間に出来ていた境界を取り除く。がしゃん、と一まとめにされた忍具が金属の音を立てていく中で、佐助は膝を立てて立ち上がりかける。 「え、ちょっと臍曲げないでよ」 「俺がいかに心配してたかなど、佐助には些細なことなのだろな」 戸を開ける手前で背中を見せたままの幸村が、不満そうな声を張り上げる。佐助はぐんと膝を伸ばして勢いよく立ち上がった。 「ちょ…マジ?心配してくれてたの?俺様大感激〜」 直ぐに幸村の背に追いつく――そして佐助は彼の両肩に手を添えて、顔を近づけて甘えるように囁きかける。 「だぁんな…」 「知らぬわッ」 ――ゴッ! ごん、と幸村の後頭部が佐助の頭に直撃していく。不意打ちにも近い頭突きに――しかも幸村の石頭だ――佐助がその場に沈み込む。後には振り返ることなく出て行った幸村の足音だけが響いていった。 臍を曲げた主の機嫌を取ろうと佐助はしきりに幸村の周りをうろついた。そうしている合間に膨れっ面を引っ込めて、幸村は無言で佐助の裾を引っ張り始める。昔からそんな仕種を始めると怒りも収まってくる頃合だと知っている――佐助は笑顔になりながら、それでも確実に幸村から赦しの言葉を貰うまでは、と彼の機嫌を取り続けていた。 「まだ怒ってる?」 「――――…」 「ごめんね、でもさぁ…今回、色々無理しちゃったから、流石の俺も体力が追いつかなくてさ…」 「もう良いと言っておるに」 座る佐助の背に、暖かい感触が染みてきている。寝支度を整えている最中に「座れ」と言われたと思ったら、ぺた、と背中が温かくなった。その温もりが幸村のものだというのは直ぐに解る――佐助よりも彼の方がずっと体温は高いのだ。 ――あったかいなぁ。 背中が温かくなってくると、ふわりと眠気が襲って来そうになる。それでなくても疲労はまだ完全には取れていないのだ。 「あの…さ?」 「何だ?」 「背中、ぴったり付けて…甘えてるの?」 「――…ッ」 すい、と背に触れていた彼の背が離れようとする。佐助は空かさず体勢を入れ替えて、幸村の背中を胸元に引き寄せた。 「甘えてくれてるなら、嬉しいんだけど…」 「ううぅ…」 「だぁんな、俺まだ還ってきてから旦那に触れてないね」 顔を寄せながら鼻先を彼の頬に押し付ける。すると幸村は抵抗する素振りもなく、肩を縮めて佐助の胸元に収まった。だが肩越しに振り返った幸村は、悪戯が見つかった子どものようにばつ悪そうに眉根を顰めていた。 触れる胸元、そして背が、じわりと手に馴染んでくると、ふと疑問を持ってしまった。佐助は後ろから抱き締めながら、そっと彼の前に腕を伸ばした。 「俺がいない間、こっちはどうしてたの?」 「あ…ッ」 びく、と揺れた幸村の身体を引き寄せる。そして着物の上から――既に単衣になっているせいで薄い布だ――手元をゆるゆると揉み始めていく。 膝を閉じそうになる幸村の足を、自分の足で固定してから、割り開き、下帯の上からぐにぐにと股間を揉みしだく。 「自分でした?」 「そ、んな…ことはッ」 ふるると首を振る幸村は既に瞼をぎゅっと引き絞り始めていた。 ――堪えちゃってさぁ。 そういう素振りが自分を昂ぶらせてしまうなど、幸村には予想もついていないのだろう。 佐助は下帯の脇から手を差し入れ、直に彼の陰茎を掌に乗せた。 「ふ、んん…――ッ」 逃げをうち始める腰を引き寄せてから、ゆるゆると彼の陰茎を撫でていく。まだ柔らかさがあるそれを、掌で持て余しながら耳朶に囁く。 「待っててくれたんだ?」 「――…ッ」 「あれ?違う…?」 びく、と腰を揺らして幸村が身体を硬直させる。たぶん幸村のことだ、自分でするなど思いつくことも稀だろう。それよりも佐助に囁かれたことに羞恥を覚えているに違いない。覗き込むと、狼狽して瞳を泳がせている幸村が、ぶわ、と鼻の頭に汗を掻き始めていた。 「それじゃあ、どんな風にしたの?」 手をそろりと彼の陰茎から離す。少しだけ先の割れ目に指先を乗せると、ぬる、とした感触があった。 ――俺に旦那の快い処、教えてよ。 触れるのを止め、彼の腰に腕を回して耳に囁きかける。すると幸村は泣き出しそうな顔で振り返りながら、もごもごと歯切れ悪く口篭っていく。 「あ…佐助、が…――」 幸村の気持ちはすでに解っている。いつものように佐助に翻弄されたいのだろう。 ――でも、ちょっとは意地悪してもいいかな。 戸惑い、揺れる主の顔を眺めていると、嗜虐心が沸き起こってくる。佐助はくるんと幸村の腰を回して足を抱え込む。すると幸村はぱちりと瞳を見開いた。 自然と正面で向き合う形になる。しかし其処まで来ると、支えていた手をパッと離して、佐助は足を投げ出して、後ろ手になりながら幸村を見つめた。 佐助の足の上に両足を開脚気味にして座り、肩にまだ単衣を羽織ったままの姿と云うのは、どうしても興奮してしまいそうになる。 「え〜、でも俺まだ疲れてるんだよねぇ…」 「ぬ…」 ぐ、と前屈みになりながら幸村は単衣を引き寄せて、慌てて前を隠してみせた。佐助はほくそ笑みながら、する、と手を伸ばすと幸村の頬に当てる。 「その気にさせてよ」 「え…――?」 「俺がしたくなるように、俺を誘ってみて?」 「そッ、そのようなこと……ッ」 言われたことを理解するのに珍しく時間は掛からなかった。もじ、と揺れる彼の腰に、此処まで密着して――しかも久しぶりだ――感じない筈はない。佐助はにこりと笑顔になりながら彼に告げた。 「ね、してみせて?」 「――は?」 きょとん、と幸村は呆気に取られた顔をしてみせる。察しが悪いなぁ、と呟きながら、幸村の頬をゆるゆると撫でる。 「自分でさ、擦って」 「――…ッ」 もう片方の手で幸村の手首を掴み、自身のそれに握らせる。佐助の手に誘導されて自分の陰茎を握りこまされた幸村は、ぱくぱくと口を半開きにしていく。 「扱いて」 「――…ッ」 佐助はわざと顔を寄せて、幸村の耳朶に掠れた声で囁きかける。 「感じて」 「――ぅう…」 背筋の震えからして幸村が言葉だけで感じているのは明白だった。だが佐助は追い討ちをかけるように彼に告げていく。 「達ってみせて?」 暫しの沈黙の後に、しぶしぶながら頷いた幸村に、佐助はごくりと咽喉を鳴らした。 ――ちゅ。 囁きかけていた耳朶に唇を押し付けると、耳たぶを吸い上げる。そうすると、幸村は「ん」と鼻先から甘えたな吐息を吐き出していった。 佐助の目の前で、ゆるゆると手を自分の股間に宛がい始める。 だがかなり羞恥の方が強いのだろう。幸村の手はふるふると震えている――だが佐助はそこで止めることはしない。助けを求めるように幸村が視線を向けると、佐助は再び後ろ手になって眺め始める。 「さ、佐助…ぇ」 「何?そんなんじゃ俺興奮しないよ?」 ぐ、と詰まった幸村は寄せた裾の合間に手を差し込み、ぬる、と自身の陰茎を撫で上げる。そしてゆっくりと手を上下に動かし始めた。 「っ、あ…――ッ」 思わず漏れた声に、幸村はぎゅっと瞼を絞る。だが肝心の場所は佐助の位置からは単衣の裾に隠れて見えない。 「もっと色っぽく脱いで、もっと見せてよ」 「――…っ」 びく、と幸村が肩を震わせて瞼を押し上げる。そして言われるままに肩を抜こうとするので、更に追い討ちをかける。 「俺に触られてるって思ってさ。ほら、首から撫でて、胸に」 「あ…」 幸村が迷っている間に、佐助は自分の手をそっと首にむけ、するすると胸まで撫で下ろした。 ごく、と目の前の幸村が咽喉を鳴らして、同じように手を自分に向けておろしていく。 「そしたら乳首に指、絡ませて?」 「ん…」 やって見せると、同じように幸村は自分の胸元を弄り始めた。片手で胸を弄り、もう片方の手で陰部を撫で下ろしている。 ――くちゅん。 次第に幸村の陰部から濡れた粘着質な音が響き始める。そうなってくると、肌蹴た幸村の素肌がほんのりと色付き始めた。 「いいねぇ、なんか俺もしてるみたいな気分」 「や…っ、ぁあ」 「そのまま手を下に向けて。そう…わかる?」 言われるままに幸村は胸元にあった手を、陰茎の奥の柔玉に添えた。 ――やべ…やらしい。 ぐちゅぐちゅと濡れた音を立てながら、幸村は時折歯を噛み締めて、自身の陰茎を上下に扱き始める。だがその合間にも指の先で、先の割れ目をぐりぐりと抉るように動かしはじめる。 「あ、…ッ、あ、っ…――や、ぅ」 ぎゅう、ともう片方の手で揉み込んでいた陰嚢を、たぷたぷと揺らし始めていく。そうしていると幸村の内股が、びくびくと引き連れていた。 「さ…――けぇ…っ」 ――俺がしているの、覚えてんだねぇ。 じっと目の前で幸村が繰り広げる痴態を眺めながら、佐助は小さく自身の口から吐息を吐いた。幸村には気付かれないように、は、は、と細かく息を吐いていく。 「や…っ、ん」 「旦那ぁ、もっと奥も自分で弄って見せてよ」 「――…ッえ」 「だって俺いつも慣らしてあげるでしょ?」 佐助に声を掛けられて幸村は、はーはー、と肩で息をしながら腰を軽く浮かせた。手にぎゅうと握りこんだ陰茎からは、とろとろと透明な液が零れ落ちていく。 ――ぐちゅ、ちゅ、ぐちゅん。 陰嚢を持っていた手で幸村はそっと自身の陰茎を撫で上げ、手に先走りを擦りつけた。 「う…――ぅ、っ、あ、アッ」 「何なら支えてようか?」 「い、いら…ぬ」 幸村は手に自身の先走りを塗りたくると、そのまま膝を立たせて後ろ手に――両手を添えて――臀部に這わせた。佐助の目の前には屹立した彼のものが見える。 ――ぐちゅ、ぐぷぷ… 「ふ、はぁ…ぁァッ、ん――ッ」 自身で後孔に指をもぐりこませて、幸村はふるふると首を振ってみせる。すると、腹の前で陰茎もまた揺れて彼の腹に打ち付けられていく。 「んァッ――…ッ」 「すっげ…旦那って結構やらしいんだねぇ」 「そ、んな…――こと、…」 「だって溢れてるよ?此処、今触ったら…」 「は…ッ」 言葉だけで、佐助は顔を寄せて、ふう、と幸村の濡れた陰部に息をを吹きかけた。するとぶるぶると幸村は身体を震わせて行く。 ――ぐちゅぐちゅ、ぐぷ。 後孔を抉る音は止まない。そのまま粘着質な水音を立てて、彼は背を撓らせる――すると自然と胸元を突き出す形になり、淫靡に身体を捩っていく。 「あ、ぅ…っ、さ、すけ…――ッ」 どくどくと鼓動が跳ねていく。観ているだけで犯しているような気がしてならない。幸村は口元からぽたぽたと唾液を零しながら、んくんく、と咽喉を動かしている。その度に、ちろちろと赤い舌が見えていた。 ――イッて見せて。 小さく囁くと、彼の陰茎に浮き出た血管が、ぶる、と大きくなったように見えた。そして幸村はひくひくと咽喉を反らせたかと思うと、小刻みに身体を動かし始める。じわじわと幸村の眦から涙が零れ始めていた。 「あ、ああ…――ッッ!」 ぶる、と大きく身体を震わせたと思った瞬間、屹立していた彼の陰茎から勢い良く精液が吐き出された。びゅ、と勢いよく出たそれは、中々収まらずにびしゃびしゃと彼の胸元から顎先まで飛び散っていた。 ――すっごい、どれだけ出すんだよ? ぶるぶると身体全体を弛緩させた幸村の腰が、くた、と落ちそうになった。 「は、はふ…、ん……――ッ」 「お疲れ様、旦那」 空かさず佐助は腕を伸ばして彼の腰に宛がうと、自分の胸元に引き寄せた。それでも背後に、くたり、と身体を弛緩させていく幸村は応えられずに絶頂の余韻に浸っていた。はらはらと彼の長い髪が、佐助の足に触れて擽ってくる。 「いっぱい出たねぇ…」 ――ぬら。 舌先を引き寄せた幸村の胸元に寄せて舐め上げる。すると彼は驚いたように顔を起して、佐助の頭を抱え込んだ。 「あ、佐助…ッ、何を…」 「ん?旦那の味、確かめておこうと思って」 「や、やめろ…そんなッ」 ぐい、と幸村は佐助の髪を握りこんだ。佐助は片方の手を伸ばして、つい、と幸村の顎先を拭うと、指をぱくりと口に含んだ。 「こんな処まで飛んでさ…我慢してた?」 「あ…――んっ、んん――ッ」 顎先を掴んで口付けると、幸村は佐助の胸をぐいぐいと押して抵抗した。直ぐに唇を離すと幸村は涙目になっていた。 「濃いでしょ?お裾分け」 「ううう…――ひ、酷いぞ…ッ」 ぐす、と口元を歪めて幸村は涙目になっていく。自身の吐き出したものを味わわせられて、うえ、とえづく姿さえも佐助を煽るだけだ。佐助は宥めるように彼の背に手を当てると、ぐっと引き寄せて胸元を押し付けた。すると幸村は佐助の頭を抱え込んで、うっとりと瞳を眇めてみせる。 「ごめんって。でも、今度は俺の味わわせてあげるから」 「え…――っ」 中腰になっている幸村の腰骨に指先をめり込ませ、ぐ、と下に向けて力を篭める。 「力、抜いて」 「ひ、ッッ――……ン、ッ」 ――ぐち。 一瞬だけ腰を強く押し込んだら、粘着質な音が強く響いた。そのまま力をなくして腰を落とした幸村の中に、自身を収めこむと佐助は抜き挿しを強くしていく。 「あ、あ…――ぅ、あっ」 「気持ちい、堪んねぇよ、旦那…」 ぐちゅぐちゅと彼の中を激しく掻き混ぜながら、佐助は何度も腰を強く穿ち込み、果てる頃には幸村はぐったりと悦楽の中に沈みこんでいった。 眼を覚ますと、さらさらとした布団の手触りに幸村は、ん、と吐息を吐き出しながら身体の向きを変えた。だがその直後に、ぬるりとした感触が下肢に滑り込んできて、気持ち悪さに瞳を押し上げた。 「――…ッ」 ぬるりとするのは後孔だ。そこがぐしゅぐしゅに熟れて、力をなくしているのが解る。瞳を辺りに向けてみると既に夜はとっぷりと更けていた。 「佐助…――?」 先程までこの腕で抱いていた相手の名を呼ぶ。しかし彼からの返答はなかった。幸村はのそりと身体を起こすと、まわりと見回してから、ふう、と嘆息した。 「俺をこのままにしておくなど…減給ものだな」 苦笑しながらも、彼に触れられたことによる充足感は否めない。身体を起こして座り込んでいると、ぬるぬると下肢が疼いた。 ――どうにかしないと。 つい、と自分の下肢に視線を落とす。渇いてきている身体に青臭さが残っている。だが佐助もいない――動いて湯屋に行くには、膝が笑ってしまっている。 「ふ…――っ」 幸村は吐息を吐き出すと、手を奥に滑らせた。先程まで彼を咥え込んでいた其処は、入り口の襞をふくりと腫れさせている。 「いた…――っ」 じわ、と涙が浮かぶ。ぴりりとした痛みもあるが、それよりも羞恥の方が強い。幸村はもう一度、ふう、と息を吐くと自分で指を中に突き入れた。 ――くちゅん。 「――――ッ!」 濡れたものが、指伝いにだらだらと零れてくる。流れ出てくる感触に、怖気が走る。どろりと流れてくるのは佐助の吐き出したものだ。 「あ…――っ」 指を内部で展開する。そうして抉って、掻き出していると、徐々に佐助に触れられているかのような気がしてしまう。 「あ、ぅ…さ、け…――さす、け…ッ」 だら、と内股にも彼の吐き出したものが、零れ落ちてくる。ふるふると自身の陰茎が再び熱を持ち始めたのを感じながら、幸村は背を撓らせた。 「――ッ、ん、あぅ…佐助、ぇ…」 「旦那?」 「――――…ッ」 びくん、と幸村が身震いする。すると佐助が戸を半開きにして――手には湯桶を持って――其処に立っていた。 あわあわと幸村が硬直してる中で、佐助は自身の口元に拳を宛がってぽぽぽと眦を染めあげた。 「うっそ…自分で片付けようとしてた?」 「あ…――っ」 「俺、役得?こんな旦那見れて…」 ――暫くおかずにこまらなそう。 照れながら佐助は中に入ってくると、幸村の横に桶を置いてから、四つん這いで這ってきて、同じように四つん這いになりかけていた幸村の背後にぴたりと身体をつけた。 「や、さ、佐助?」 「俺がこのあとはしてあげる…名前、もっと呼んで。いやらしいこと言って見せて?」 「うううううぅぅぅ」 羞恥で狂いそうになりながらも、疲弊した身体では彼の手管に適う筈もない。幸村は諦めてただ喘ぐだけだった。 「じゃあ、いってくるね」 かちゃん、と手甲を嵌める手を見つめて、幸村は腕を組んだ。そして佐助に頷いてから、還ったら直ぐに報告に来い、と告げる。 「はいはい、解ってますよ」 「直ぐだからな、直ぐ」 「帰ったらまたご褒美頂戴ね」 ちょん、と幸村の鼻先に唇を落としてから、佐助はふわりと身を躍らせていった。その後先を眺めながら、座ったままの幸村が横にばたりと倒れこむ。 「人の気も知らないで…」 ぶわわわと身体を熱くさせながら、幸村はただぎゅうと瞼を引き絞っていった。 了 100526/100602 up タイトル決まらないので暫く放置してた話。 |