はじめての





 ――さて、どうしようか。

 そう思い悩むようになって数日経った。何を思い悩んでいるのかと聞かれれば、どう答えたらいいのかと悩みもするが、いわば「恋」についてとだけ答える。
 片思いかと言われればそうではなく、恋仲になったからこその悩みだった。

 ――本当にどうしようかな。

 はふ、と溜息を付きながら薬草を乳鉢の中で捏ねていると、背中に当たる温もりに気付く。その背中はよく知った背中で、佐助とは逆に向いて得物――千本やら苦無やらを手入れしている。

「才蔵…――」
「何だ?」

 背中合わせのままで佐助が声をかけると、さして興味もないような――気の抜け切った返事だけが返ってくる。佐助も手元の動きを止めずに――ごりごりと薬草を練りこみながら、世間話でもするかのように問うた。

「お前、男の経験ある?」
「――――…ッッ」

 がっしゃん、と背後の才蔵が手元にあった武器を取り落とす。だがそれでも佐助は手元を緩めずに平然と聞いた。

「なぁ?」

 ――どうなの?

「何を言い出すかと思えば、お前は…」

 ふう、と溜息をついてから才蔵が肩越しに振り返る。その気配を感じながら、手を伸ばして薬草を掴みこみ、ぱらぱら、と乳鉢の中に押し込めると、再びごりごりと練りこむ。

「だって気になるっていうか」
「忍なら…里を持つ忍ならそれくらいは」
「――……」

 ごり、と乳鉢を動かす手を止める。沈黙を伴って動きを止めていると、才蔵が身体の向きを僅かにずらす――がさ、と衣擦れの音を響かせて彼は興味深そうに佐助を覗き込んでくる。

「まさか佐助、お前」
「その、まさか、なんだよねぇ」

 手元の乳鉢をずいと前に押し込んで、佐助もまた少しだけ腰を動かして、僅かに才蔵と向き合う。掌をひらりと上に向わせて、首を反らす。

「俺様、男の経験ないのよ。お師匠さんにも、やってこいって言われなかったし」
「女は?」
「ああ、流石にそっちはあるけど…」

 ぱち、と視線を動かすと、才蔵は瞳を眇めて――眉根を寄せた。暗に説明を求められていると受け取って佐助は先を続けた。
 そもそも、こんな事にならなければ、思い悩むこともなかった筈だし、必要なかったことなのだ。

 ――割り切ってきたから。

 自分の分を認めるという事は、自分の役割を認識している事でもある。男の忍としては、それは今まで必要と思ってもいなかった。

「閨事はくの一の仕事でしょ?だからさぁ…」
「めでたいな。で?急に気になりだしたのは?」

 才蔵が後ろ手になって身を反らし、脚を伸ばす。その動作から視線を外しながら、佐助は口篭った。
 気付かれているとは解っている――だが、それをどう説明したらいいのか判らない。

「いや…その…――」
「大方、幸村様絡みだろう?」
「うん…」

 こく、と素直に頷いた。佐助は結んでいた後ろ髪を解くと、わしわしと頭を掻いた。

「抱き締めて、口吸いして、そこまでは良かったんだけど」
「――――」

 才蔵が静かに聴いている。話していると徐々に語調が強くなり、手が戦慄いてきた。

「でもこの先どうしたら良いわけ?突っ込めばいいの?何処に?って…」
「ぐほッ」

 噴出した才蔵が後ろ手を崩す。ばたん、と盛大に後ろに倒れたが、佐助は飄々と彼を見下ろした。

「と、まァ、そんな訳で焦ってしまって。ねぇ、どうしたらいいと思う?」
「生々しく言うなッ」

 僅かに動揺を見せながらも才蔵は身体を起こした。確かに自分の主にどうこうと――いや、その前に主と恋仲になっているなど、他の者には相談できやしない。したところで好機の眼に晒されるだけだ。
 じっと才蔵の返答を待っていると、彼は気を取り直して胡坐を掻き直した。

「だが、それならば主の方が解っているのでは?武士なのだし」
「あの人、武士の習いになんてそってないよ。やってないって」
「ああ…――だろうな」

 ――あの初心さからしたらな。

 思い出すように上を向く才蔵に一縷の望みをかけて相談しているという状況だ。すると、不意に才蔵が「ふふふ」と咽喉を振るわせた。

「何だよ?」
「初めて同士か」
「悪いか」

 くっくっく、と咽喉を鳴らす才蔵にむきになって口を尖らせた。すると子ども扱いするように才蔵の手が伸びてきて、わしわし、と佐助の頭を撫でる。

「悪くはない。寧ろ見ものだ」
「見せものじゃないんだから、見ものなんかにならないよ」

 ――ぱし。

 才蔵の手を振り解くと、彼は腰に手を宛がって「はあ」と溜息をついた。

「…イイだろう、教えてやる」
「あ、実地は無しで」
「当たり前だ。誰がお前としたいなんて思うかッ」

 ――ばしッ。

 勢い良く佐助の肩に才蔵の平手が打ちつけられる。どん、と衝撃を受けながらも佐助は口元をにやりと吊り上げた。

「はいはい。才蔵先生、よろしくお願いしますぅ」
「白々しい…俺が教えるんだ。せいぜい喜劇にだけはしてくれるなよ」

 そう言うと、ひそひそ話をするかのように頭を寄せ合っていった。











 幸村の側に控えていると、幸村は佐助を背凭れ代わりにしてきた。彼を胸の中に収めながら、一緒に彼の読んでいる書物を覗き込む。

 ――相変わらず、暖かい身体してるねぇ。

 胸元に寄りかかっている幸村の背中が、佐助の胸元に熱を伝えてくる。
 ぱら、とページを捲る音が響くが、そもそもこんな格好で書物を手繰るような人ではない。業とこの体勢になっているのだろうと予想が出来た。

「あの…さ、旦那」
「なんだ?」
「この体勢には、意味、あるの?」
「――――…ッ」

 ばたん、と思わず手にしていた書物を閉じて幸村が身体を硬くする。その様子に予想が外れていなかったと胸を撫で下ろした。

「やっぱり意味あったんだ」
「済まぬ…某、どうしたら良いのかも解らないのだが」

 ――ただ触れていたいのだ。

 背中を丸めてぼそぼそと話す幸村の耳が、後ろから見ていても紅い。僅かな行灯の灯りに照らされているだけなのに、その紅さが解ってしまった。

 ――ぎゅう。

 あまりに紅い耳に、佐助は手を伸ばして覆いかぶさるように抱き締めた。ぐい、と腰を引き寄せられて幸村が猫背を伸ばす。後ろから腕を回して、幸村の肩に鼻先を埋めて、顎先を捉えると、少しだけ潤んだ瞳が視界に入ってきた。

 ――可愛い…って、駄目だろ、可愛いって思っちゃ!

 一瞬我に返りそうになったが、やはり愛らしく見えてしまうから恋は不思議だ。凛々しい雰囲気を湛えている筈の、この悋気に逸ることもある主を、可愛いと思ってしまう自分に「参った」と思いながらも、動く手を止められない。
 顎先を自分の方へと向けさせると、幸村の背中が再び佐助の胸元に引き寄せられる――そのまま鼻先を寄せていき、上唇を啄ばむ。

「ぅん……――ッ」

 上唇を啄ばむと僅かに開いた唇を重ね、直ぐに離し、再び角度を変えて重ね合わせる。舌先を滑り込ませながら、にゅるりと動かしていく。絡め取る舌先が逃げて、それを追って先で突く。

「ふ、――は、」

 ふ、ふ、と途切れがちになる幸村の吐息に、じわり、と背中が熱くなってきた。

 ――ああ、やっぱり可愛いわ。舌、甘いし。

 必死で佐助の舌先の動きについて来ようとする。絡め取ると、その真似をするように動き、歯列をなぞると鼻先から甘えたな吐息が漏れる。

 ――舌の裏側、感じるみたい。

 じゅっ、と後を引くように舌先を吸い上げると、紅く濡れた舌を突き出したまま、幸村が、もっと、とせがんで来る。

「ぁッ――…っく、ん」

 片腕が上がり、佐助の首を引き寄せるように動いていく。じわ、と幸村の肌が湿り気を帯びてくるのが解った。佐助は熱くなっていく彼の背中を感じ、再び唇を貪りながら腕を伸ばして幸村の胸元を掌で辿った。

 ――びくん。

 帯を通り越して、単衣の上から彼の股間に手を伸ばす。すると其処は既に膨らんで、布の上からも解るほどに存在を誇示していた。

「ッ、さ…佐助ッ」
「あ…やっぱり」

 ――反応してるんだ?

 肩口から覗き込むと、幸村ががばりと単衣を両手で押さえて背中を屈ませる。勢いで離れてしまった手を、佐助は思わず握ったり開いたりしてしまった。

「だから背中ばっかり見せてたんだね」
「うぅ…――頓死しそうでござる」

 顔を両手で覆う幸村の首筋が赤い。佐助は逃げてしまった幸村の背中を再び引き寄せて、肩口に顎先を乗せた。そして顔を覆う幸村の両手首を掴むと、後ろ手になるように誘導する。

「頓死なんてヤダよ、そんなの」

 ――触って。

 耳元に囁きながら自身の股間に幸村の掌を宛がう。すると、あっ、と声を上げて幸村が背中全体を振るわせた。
 幸村の掌に自身が触れる――其処は彼と同じように既に反応して硬くなっている。その感触が幸村に伝わっている筈だ。

「俺様だって、ね?同じだよ」
「佐助……――」
「此処は任せて、って言いたいんだけど」

 ――ごめんね。

 ぐり、と自分の腰を彼の腰に押しつけると、佐助は覆いかぶさるようにして幸村の身体を横たえていく。優しくするから、と耳朶に囁きながら敷きこんでいくと、幸村は小さく、こくり、と咽喉を震わせていった。













 帯を振り解いて、袷を開いて、幸村の脚を広げさせる。その合間に自分の身体を押し込めながら、彼の濡れた陰茎と自身のを擦り合わせていくと、ぬちゅぬちゅ、と粘着質な音が響いていった。
 流石に最初から咥え込むのは、と躊躇ってしまったのもある。

 ――教えてもらったけど!俺様、舌技を駆使するにはまだ度胸が足りないよ!

 手の中にある熱くて硬い陰茎――これを口に含むことは流石に最初からは躊躇われてしまった。だが敷きこんだ幸村は瞼を閉じながら――時々見開いては、佐助を潤んだ瞳で見あげてくる。その度に、きゅん、と下腹が締め付けられそうになる。

 ――にゅる、にゅ、ぐちゅ…

 動かす手を少しだけ止めて、はー、と呼吸を整える。

「ちょっと休憩」
「な…――ッ」
「触ってるだけで達きそう…」

 言いながら口付け、佐助はそっと指先を幸村の陰嚢の奥――後孔へと滑り込ませた。手に絡んでいた先走りで既に其処までもぬるぬると滑っている。
 二、三度入り口を指先で往復させると、指先をゆっくりと中に潜り込ませていく。

「此処、どう?」
「ッい…――」

 びくん、と幸村の身体が撓った。ぶるぶると震える身体を見つめながら、ゆっくりと指先を中に挿れては出していく。強く力が入ると押し開くのも難しい其処を、襞を広げるように何度も動かしていく。

「あ、あぅ…ん…――ッ」

 徐々に幸村の目元がじわりと潤んできた。涙が睫毛を濡らして行く。それを見つめながらも、佐助はぐっと彼の腿に手を宛がって押し広げていく。

 ――耐えてる旦那の顔って、色っぽい…

 ごくん、と咽喉が鳴る。眉根を寄せて、眦を紅く染めて、はふはふと呼吸を繰り返す幸村が佐助の欲を煽っていく。眼を離せないでいながらも、佐助は一本だった指を二本に増やした。

 ――ぐにゅ…

「あ、入った」
「は、はふ…――」

 息を吐きながら、幸村が瞳を瞬く。熱いのか、片手で自分の額にかかる髪を撫で上げていた。佐助は動かす指を止めずに顔を近づけた。

「痛い?」
「痛くは…だが、何だか熱くて」
「――滑りよくなってるんだけど」

 ――足りないかな?

 問いかけながら、佐助は自分の脱いだ服を手繰り寄せて、中に忍ばせていた油を取り出す。それを素早く手に絡めると、ひたり、と幸村の後孔に宛がう。

「さ…佐助…っ、さすけ…――」
「うん?なぁに?」
「何で…そんな処、を…――」

 散々解されていながら、まだこの準備の意味を理解していなかったのだろう。乱れる呼吸の下から幸村が問いかけてくる。

「やだなぁ…此処に挿れるからだよ」
「え…――ッ」
「だから、此処で、ね?」
「だが、其処は…出すところであって、挿れるところでは…――ッ」

 ぐ、と幸村の脚が閉じかける。しかしそれを許さずに押し広げ、指先を上に向けて動かした。ぐりり、と内壁を擦ると途端に幸村の身体が弛緩する。

「ぅうあ……――っ、あッ!」
「え…ッ」
「――ッ、は…ああぁ…――ッ」
「此処?此処がいいの?」

 ぐりぐり、と同じ場所を擦ると声も出せずに幸村が身体を弛緩させていく。びくんびくん、と跳ねる身体が――仰け反らされた咽喉が、やたらと艶めかしい。
 どきどき、と佐助の胸が高鳴り出す。興奮しているのは解っている。指先だけでこれだけ乱れる彼を見ていると、このままひとつになってしまったらどれ程気持ち好いのか、想像できてしまう。幸村の腰が揺れて、陰茎が腹に当たって跳ねる様を見つめながら、佐助は自分の下肢も重くなっていくのを感じていた。

「あぅ…――ッ、さ…さす…――」
「ごめん、旦那…痛いかもしれないけど」

 ――もう我慢は無理。

 ごく、と何度目になるか解らないが、咽喉が鳴った。どれほど潤しても、咽喉が飢えてならない。
 ぬぷ、と指先を幸村の後孔から抜き、佐助は己の怒張した陰茎を宛がった。

「あ…熱…――ッ」
「行くよ、旦那…――」

 ぬるぬると入り口を擦り付けながら、ぐに、と先を押し進める。すると幸村の瞳が大きく見開かれた。

「うぅ、あ…――ッ、あああッ!」
「っく…力、抜いて」

 ――ぐぐぐ。

 先にただ押し進めていくと、内壁が押し戻そうと動く。中まで油を塗りこめても、それは然程変わりはない。佐助は入り口付近を細かく、腰を揺らして出し挿れさせながら押し進めていった。

「や…、痛ッ…――ッ」

 ぎゅう、と目元を引き絞って幸村が声を絞り出す。めりめりと内部に向って押し進めていくと、ぴり、と音がしたような気がした。

「あ…――ッ、んっく」
「はふ……だ、んな…――」

 やっとの事で押し込めると、佐助は身体を折り曲げて幸村の唇に吸い付いた。幸村は涙で濡れた瞳で見あげてくると、両腕を佐助の首元にかけてきた。

「佐助ぇ…痛い…――」
「うん、うん…ごめんね」

 ――少し切れちゃったみたい。

 汗で濡れる幸村の額を、掌で撫で上げながら、宥めるように鼻先に口付けた。そして、ゆさ、と腰を動かすと幸村が甘やかな吐息を漏らした。

 ――ぐちゅん、ぐちゅ…

 先ほどよりも濡れた音が強い。鼻先に鉄錆の匂いが混じる。痛みに耐えて眉根を寄せているのに、ゆっくりと動くと幸村の口からは熱い吐息が漏れていく。

「や、駄目だ…おかしく、なる…――ッ」
「なって良いよ、旦那。痛いのに、感じてるんでしょ?」
「あ…――ッ、い、言う……なぁ…ッ」

 動くままに腰を進めると、ぐちゅぐちゅ、と濡れた音が響く。更に折り曲げて重ね合わせた胸――そして、佐助の腹にまで幸村の陰茎が触れて、熱さを伝えてくる。

 ――ヤバいなぁ、此れは…癖になりそう。

 はふ、と佐助は口から息を漏らすと、咽喉を反らせた。腰が動いていくのを止められない。手を差し向けて――幸村の膝裏をぐっと押し開くと、ぴり、と嫌な音がした。

「ヒッ…――ぁう、うあ…ッ」
「旦那、マジでごめん…――ッ」

 言いながらも、ぐいぐいと自身を出し挿れしていく。膝裏に添えた手が、血に染まっていたが、それさえも興奮する材料にしかならない。

「あ、ああ…も、駄目…ッ」
「…ッ、俺様、も…ッ」

 しっとりとした汗を滲ませて、幸村がふるふると身体を震わせていくのと、佐助が達するのが、ほぼ同時だった。












 正直な所、行為自体は気持ち好かった――だが後始末が大変だった。
 血に染まった布団も、単衣も、全て脱ぎ去った幸村の身体は、見るに耐えかねるもので――更に言えば、立ち上がれなくなってしまった彼を、湯屋に抱え込んでいった際にも、自己嫌悪に陥るしかなかった。

 ――俺様、最低…。

 内部に出してしまった精液を、指先で掻き出すと、ずるり、と紅く染まった液が零れ出てきた。それを羞恥で顔を染めて、幸村が唇を噛んでいる様がやたらと色を含んでいて、其処でも致してしまった。

 ――ああもう、本当に最低だ、俺。

 顔に手を当てて後悔しているのに、今、自分の膝の上にはその相手の頭が乗っている。

「佐助ぇ…――」

 力なく伸びてくる彼の手を握って、肩までをずっと撫で擦る。

「ごめんね、旦那…もうしないから」
「え…――ッ」

 ぱち、と瞳を上げて幸村が見あげてくる。膝に頭は乗せたままで、吃驚していた。

「え、だって…痛かったでしょ?」
「そ…それはそうだが」

 のそ、と上体を起しながら、幸村は「あたた」と腰に手を当てる。慌てて佐助が敷物を差し出すと、すい、と幸村は顔を近づけてきた。

 ――ちゅ。

 触れるだけで直ぐに離れたが、幸村から佐助に口付けてきた。驚いて固まっていると、今度は乗り出してきて佐助の頬を包みこんでから、口付けてきた。

「だん…な…――ッ」
「痛いには、痛かったが…嫌いではない」
「――――…ッ」
「お前と一つになれるのなら、これくらいは…」

 きゅん、と胸が締め付けられる。佐助はがばりと幸村の背を引き寄せて抱き締めると、ぎゅうう、と強く腕に力をこめていった。

「旦那ぁぁぁ…――ッ」
「また、抱き合おう。な?」
「うん…今度はもっと腕、磨いてくるから」
「えッ…――ッ?」

 ――何処で?

 聞き捨てならないと顔を起す幸村に、佐助はただ笑うしか出来なくなっていた。
 痛みも、熱さも、全て受け入れてくれる腕の中の大事な人――もっと強く抱き締めあえたらと思いながら、彼の匂いを思い切り吸い込むだけだった。














091123 up 立花しゃんに!