Sweet Halloween?





 山と積まれた団子を食べたいと云うので、わざわざ足を運んで買いに行ってきた。団子の種類には、みたらし、あんこ、草団子だ。それを器に盛り上げて、佐助は幸村を呼んだ。

「旦那ぁ、今日のおやつですよ」
「忝いな、佐助」

 くるくる、と書状を折りたたみながら幸村が深く溜息をつく。彼にしては珍しく机に噛り付いての執務だった。

 ――どうせなら、身体を動かしている方が好きなんだろうけどね。

 だが鍛錬だけでは成り立たない――執務だけはしっかり遣ってもらわねばならない。

 ――旦那が執務を怠ったら、俺達飯の食い上げだもんなぁ。

 ととと、と茶を淹れながら彼の前に団子を差し出すと、幸村は表情を輝かせて、ぱくぱく、と食べ続けていく。

「ねぇ、旦那。ハロウィンって知っている?」
「――はろいん?」
「そ。竜の旦那に聞いたんだけどね、こんな風に云うらしいよ」

 ――菓子をくれなきゃ、悪戯するぞ。

 佐助が指先を立てて台詞を言うと、こくん、と幸村が団子を飲み込んだ。観れば皿の上はすっかりと空になっていた。
 口の端にあんこをつけたままの幸村が、ぺろ、とそれを舐め取る――だがまだ全ては舐めきれていない。彼の仕種を見つめながら、佐助は口の中でくぐもった笑いを零した。

「だーんな、俺様が『菓子をくれなきゃ、悪戯するぞ』って云ったらどうする?」
「某、甘味などもって居らぬが」
「持ってるんじゃない?」

 幸村が手に団子の串を持ち、くるりと回した。それを受け取りながら、佐助は指を伸ばしてまだついていた、幸村の口元のあんこを拭い取る。

「今食べつくした。それに、そもそもお主は甘いものは…」
「うん、苦手」

 へへ、と佐助が瞳を細めるほどに笑う。悪びれもせずに云う佐助に、幸村が「ふむ」と腕を組んだ。

「だからさ、悪戯、してもいい?」

 身を乗り出して佐助が詰め寄ると、幸村は溜息をついてから、佐助の頬を抓った。

「あ、あだだだだ…ッ!旦那、痛いって」
「もとよりそのつもりだったのだろう?」
「あ、ばれた?」

 ぱっと離された頬を摩りながら、苦笑する。すると幸村は佐助の胸倉を、ぐい、と掴み込んで引き寄せた。

「――さっさと、悪戯、すればいいだろう?」

 間近に迫る幸村の口が、大きく開かれ、佐助の頬に噛み付いて来た。頬を噛まれてから、佐助は「お返し」と云いながら幸村の背に腕を回して引き寄せていった。










091024up