ステレオ・ハニー 酔いどれのままに佐助の上に乗り上げて行くと、佐助は両手で幸村の腿に手を添えた。そのまま、する、とソケイ部に向かって滑ってくる。 腿の辺りから指先が滑りあがり、じわじわと煽られてくるのが解った。 「ん…、――ッ」 「いいよ、ちゃんと気持ちよくしてあげるからさ」 ――たまには俺に乗ってくるのもイイでしょ? 揶揄をこめて佐助が口の端を吊り上げる。ぞくぞく、とした感触が触れられたところから広がっていく。ソケイ部の処だけを指先で、する、する、と撫でて行く佐助に手から逃げたい――だが逃げずにそのまま感じていれば、快楽に変わるのを知っている。 「佐助ぇ…――」 「なぁに、旦那?」 「おかえり」 ぐっと身体を沈みこませて佐助の耳元に噛み付きながら云うと、うん、と佐助は頷いた。彼の身体に足を広げて乗り上げ、そしてそのまま上体を沈み込ませる。そして耳朶を甘噛みしていると、彼の手が滑り込んできて、器用に幸村の帯を振り解いた。 ――しゅる、 小気味良い音を立てて帯が振り解かれる。佐助の手が臀部に沿って、丸みを誇示するようにして触れてきた。 「あ…――、ぅ、ん」 腰から臀部に向かって両手で撫で、際の部分まで行くのに再び上に撫で上げてくる。肝心な処には触れてこないのがもどかしい。 「触り心地良いなぁ…旦那のお尻って堅いよね」 「なな何をいきなり申すかッ!」 「いや、さ…調度俺様の手に納まるっていうか…それ云ったら腰なんてこんなに細いし」 ――でも筋肉付いているんだよね。 ぎゅ、と両手で尻たぶを握りこまれる。その手が割り開くように動き、割れ目のあたりをするりと触れて行く。 「触っていて気持ちいいったらなくてさ」 「うぅ、この…――ッ」 がば、と歯噛みした幸村が身体を折り込み、目の前の佐助の胸元に手をかけた。伸縮性のある服を思い切り、ぐい、と捲り上げるとそのまま幸村は彼の胸元に顔を埋めた。 「わっ!ちょ…旦那?」 今度は佐助が慌てる番だった。幸村は思い切り佐助の服をたくし上げる――首の周りに纏わり付くのを、ぐいぐいと動かしそのまま鎖骨の窪みに齧りついた。 ――がり。 びく、と佐助の身体が――敷きこんだ佐助の身体が動く。骨に齧りつきながら、唇を開いて舌先を鎖骨に沿って這わせていく。ぴちゃ、と舌先が滑った後に濡れた音が響く。 ゆっくりと佐助の咽喉元から頤に向かって舌先を向け、舐めあげると彼には珍しく瞳を落として、ふ、と吐息を吐いていく。 「偶にはされてみる方もどうだ?」 「ん、っく、駄目、だって」 「――――…」 顎先に甘噛みをしながら、そっと手を胸元に寄せると、其処に在る突起に触れさせる。指の腹で上下にくにくにと動かしていくと、徐々に形を誇示してくるものだがら、摘み上げるようにして動かして行くと、腰に回っていた佐助の手が強く幸村の服を掴んだ。 「だ、旦那…――ッ」 「ん?」 「俺、其処、ホントに感じるから…さ」 ――も、止めて。 幸村の身体を引き剥がそうと、ぐいぐいと佐助の手が押し上げてくる。幸村は構わずに佐助の胸元に吸い付いた。するといつもはそんなに声など出さない佐助が、甘い吐息を吐き出して行く。それが楽しくて何度も繰り返していった。 「ふ、ぅ、ん――……っ」 ――じゅ、ちゅぅ 強く吸い上げると僅かに佐助の身体が硬くなる。舌先で舐り上げながら繰り返して行く。だが佐助もただされているだけではなかった。幸村の身体を引き剥がそうと動いていた手が、急に力をなくして滑り落ちる。それと同時に幸村の下肢に指先が滑り込んできた。 「うあッ!」 急に後孔に触れてきた指先に、声を上げると僅かに上から佐助が首を振ってから、ふー、と息を吐き出していた。 「駄目、駄目ッ!これ以上させないからねッ」 「だからって…っ、や、ヤだ…ぁ、ん」 ――ぐに 滑りも何もない後孔に指先がぐぐと強くねじ込まれていく。指先の第一関節まで入ると抜かれ、また徐々に指先を進めては抜いていく――抜き挿しを繰り返されていくと、幸村の腰が撓りだした。 「ひ、ぁあ、あ…――ッ」 「ああ、いい感じ。ね、指、三本入ったの、解る?」 佐助の胸元にしがみ付いて、腰を上げた格好になって刺激に耐えていると、耳元に彼の掠れた声が囁かれてくる。 指先の動きが、ばらばらに動いて本数を示してくる。 ――は、恥ずかしい…ッ。 主導権が佐助に移ると途端に彼は余裕有り気に話し出す。幸村は、ぐ、と奥歯をかみ締めてから身体を起こしていった。 「其処ばっかり、弄ってないで…」 ――早く。 小さく云うと、佐助は幸村の腰に手を当てて固定する。片手で、ふー、と再び大きな息を吐いてから、彼は髪をかき上げながら云った。 「だからさぁ、旦那が乗って」 「――は?」 「動くのも、旦那がね」 「う、うぅ…――」 ――こくり。 頷くと佐助は楽しそうに膝を立てる。そうされると背後に逃げることも出来ず、彼の腰に乗り上げて腰を落ち着かせるだけだ。 「だから、早く…――」 する、と幸村はぎこちない動きで――後ろ手になりながら、佐助自身に手を添えた。 「――――…」 ふと幸村が手の中の感触に動きを止める。更に「あ」と佐助が気の抜けた声を出して、苦笑した。 「旦那ぁ、面目ない」 「――…?」 目の前の佐助は頬を上気させて――先程まで感じていたというのに、下肢は柔らかいままだ。じろりと睨みつけるようにして幸村が手の中の佐助自身を掴みこむ。 その間にも佐助は苦笑して誤魔化していく。 「呑み過ぎたみたいで、勃たないよぅ」 「気合で勃たせろッ」 ――今までのは何だったのだ! 幸村が思い切りと叫ぶと、勢いで手の中の佐助を握りこんでしまう。その勢いに「痛いって」と佐助は暴れつつ、ふうふう、と呼吸を整えると、幸村を見上げてきた。 「無理言わないでよ……口じゃ駄目?」 ――口と手で、達かしてあげるからさ。 ね、と佐助が身体を起こして口付けてくる。だが幸村は直ぐに離れると、腰を浮かせてから佐助から降りると、横に座りこんだ。そして彼自身を手の中に収めて、ゆるゆると上下に擦り出していく。 「仕方ない…じっとしておれ」 「え…――」 ――ぱく 佐助が止める間もなく、幸村が唇を近づけた――かと思えば直ぐに咥えこんでいく。口腔内に陰茎を引き入れられ、流石に佐助の腰が動いた。 「わ、ちょ…――だ、旦那?」 ――じゅる、ちゅる、ちゅ… 思い切り口を広げ、舌の全体を使って舐め上げると、唾液が滴り落ちて濡れた音を立てていく。 「うっわ…旦那ってば…――っ」 「ん、ん、…――ッ」 上下に口を動かしていると、口腔内の陰茎が硬さを増してくる。咥え込むのが徐々に辛くなってくると、舌先に苦い味が迫ってきた。 ――ちゅ、じゅ、じゅ、 口の周りに飲み込みきれない唾液が落ちてくる。それでも咥え込んで動かしたり、尖らせた舌先で括れの辺りを舐めていると、くしゃり、と佐助の手が幸村の髪に触れてきた。 「も、何…――本当に、旦那どうしたの?」 「どうもしておらん…」 「ふふ、あんたも酔ってるでしょ?」 佐助の指先が伸びてきて幸村の頭を引き寄せてくる。引き寄せられるままに顔を近づけると、鼻先が触れる――ふ、と吐いた息が唇に触れたかと思うと佐助の舌が伸びてきて、下唇を舐めてきた。 「ふふ…だからさ、旦那ぁ…もっと顔落としてきてよ」 「え…――」 「これじゃあ、届かないって。ね?」 ぐっと強く引き寄せられると、今度は舌先に唇を割り広げられる。そして中に滑り込んでくる舌が、幸村の歯列をなぞり、掬い上げるようにして舌を絡め取っていく。 ――くちゅ、ちゅ、ちゅ、くちゅ、 「っふ、……ん」 絡め取られるに合わせて顔の角度を変えていくと、ぐ、と強く腰を持ち上げられる。誘導されるように――唇を離さないままで足で佐助の腰を跨ぎこむ。 ――もう、どうでもいいから、繋がってしまいたい。 幸村は片手を動かして、硬さを持っている佐助の陰茎を握りこんだ。繰り返すキスの間で、佐助が息を付いたのに気付きながら、自分の後孔に彼のものを宛がう。そして強く中に引き入れるようにして、腰を落としていった。 「ん、ん、…うあっ…――っ」 「旦那…――大丈夫?手伝おうか?」 「い…――いい、このまま…」 ぐぐぐ、と強く押し進めていくと、ゆさ、と佐助が揺すり上げた。耐えられずに背を撓らせると「こうして小まめに動かした方が挿入るから」と幸村に合わせていく。 幸村はほぼ彼を収めきると、瞼を瞬いた。涙が自然と零れて視界が歪む。じんじんと下肢が疼くのを、何度も唾液を嚥下して追いやった。 「は、はぁ…――佐助の、熱いな…」 「――――ッッ!」 ぐ、と佐助が口を引き結んだのが解った。ふう、と呼吸を付いたばかりなのに、今度は強く下から突き上げられていく。 「う、うああっ、さ、佐助ッ!」 「御免、旦那ッ!もう駄目、耐えらんないッ」 がくがくと下から突き上げられて弾む身体に合わせて、下肢がぐちゅぐちゅと乱れた音を響かせていく。 「あ、ん…――ン、…ッ」 佐助にしがみ付きながら、口からは喘ぎ声しか出てこなくなってくる。涙目で、馬鹿者、とようやく言うと、佐助は「だから煽らないで」とより一層強く腰を打ち付けていった。 目が覚めるまで、ずっと背中に触れる佐助の細い背の感触があった。だがその後はよく覚えてない。幸村は身支度を整えると、首をこきこきと動かして廊下を歩いていった。 ――妙にすっきりしているような、だるいような。 頭がずきりと痛むのは昨日の深酒のせいだと解っている。 「ええええ?俺様、何やったって云うの!」 幸村が廊下を歩いていくと庭先で顔を洗いながら佐助が大声を上げていた。どうやら佐助も二日酔いになっているらしく、頭が痛い、とも唸っている。 その横から薬を渡しながら才蔵が面白くもなさげに、呆れ調子で縁側に座っていた。 「今朝方、布団に主を戻していたから、てっきり何か無体なことでもしたのかと」 「してないよッ!なんかもうあの部屋酒臭かったけども!」 「本当にか?」 ――何もしていないのか? ずい、と才蔵が身を乗り出す。すると、佐助はばしゃんと桶をひっくり返してから、手ぬぐいで自分の口元を拭きながら、目を泳がせた。 「昨日はその…よく、覚えてないんだよね」 「――――…」 「何だよ、才蔵」 「めでたいな、佐助よ。昨夜の貴様ときたら、主に口答えするわ…甘えるわ…」 「わあああああ、止めて、教えないで!」 ばたばたと佐助が手を動かしている。それでも何やら才蔵は色々と吹き込んでいるようだった。 ――才蔵、あれは二日酔いの薬か。 ふらりと幸村も痛む頭を抱え、彼らの元にいく。そして才蔵の後ろに立つと「薬をくれ」といった。 「あ、主。只今、ご用意いたしましょ」 「わああああ、旦那ぁぁぁ」 「うっ、あまり騒ぐな、佐助!頭に響く…」 ぐぐ、と身体を沈ませると佐助が、ごめん、と慌てて水を用意してきた。そして才蔵の薬を咽喉に流しながら顔を上げると、佐助が神妙な顔つきで此方を見ていた。 「何だ、佐助?何か云いたいことでもあるのか?」 「旦那…何処も何ともない?」 「あ、あー…何だか体中、至るところが痛いような、だるいような」 「――――ッ」 びし、と立ち尽くす佐助の表情が青くなる。幸村は薬を飲み込むと、ふう、と溜息を付きながら才蔵に湯飲みを渡した。才蔵は、くつくつ、と咽喉の奥で笑っている。 幸村は何の気なしに、いつものように佐助に笑いかけて云った。 「でも何かすっきりしているぞ?」 「決まりだな」 あはは、と才蔵が額を押さえて笑った。それと同時に突進する勢いで――半分涙目になりながら佐助が幸村の胸に飛び込んでくる。 「旦那ぁぁぁッッ!」 がし、と両肩を掴まれる。呆気に取られていると、佐助は目の前で真っ赤になりながら叫んだ。 「責任取りますっ!!」 がば、と頭を下げる佐助に、暫くどうしようかとも思った。だが必死な佐助に何故か胸がときめいてしまった。幸村は取り合えずとばかりに、こくり、と頷く。 「は?あ―…あい解った」 承諾すると、佐助はぶわあと涙をその目に浮かべて、思い切り身体の力を抜いていった。へなへなとその場に膝折れする佐助の頭に手を乗せて、ぐりぐり、と撫でながら幸村は空を仰いだ。 ――何も覚えてないとは、いえないな。 ふう、と溜息をつきながら空を仰ぐと、其処には鳶が暢気にも、ぴーひょろろ、と啼いていた。 了 090922 変なスイッチ入った人から「肝心な処が抜けている」と云われて。 |