Hot,warm,and sweet Christsmas:クリスマスのお話 いつものように家に着くと、靴を脱ぐ間も惜しんで佐助が背後から腕を回してきた。ぎゅうと抱き締められながら、幸村が肩越しに振り返る。 「佐助殿…――」 「ん〜?」 「その…靴、脱いで中に入りませぬか」 肩越しに振り返りながら、佐助が幸村の鼻先にキスを落とす。そしてばたばたと靴を脱ぎ散らかしてから、1DKの部屋の中に入り込んでいく。簡易温室に包まれた幸村の鉢は――赤い花を綺麗に咲かせていた。 「旦那、今回は蕾が二つだね」 「そうでござるなぁ…まっこと、今回は某、自分の事なのに気付き申さなかった」 ――油断してござった。 自分の花を指先で突いてから、幸村が小首を傾げる。長い後ろ髪が、背に流れるようにして揺れていた。座り込んだ幸村の背後に回りこんで、後ろから抱き締めながら、佐助は幸村の肩に顎先を乗せた。 「ごめんねぇ…本当に。無理させてしまうって解ってたんだけど、クリスマスとお正月、一緒に過ごしたくてさ」 ――全部で二つ咲いたら、ぎりぎりお正月まで一緒だね。 佐助は後ろから幸村の顎先を――指先で形をなぞる様に撫でた。すると擽ったいのだろう。幸村がふるりと震える。 「確か、クリスマスはサンタクロースにプレゼントをもらえるんでござったな」 「そ。いい子にしていると、サンタさんが来てくれるの」 「佐助殿、いい子でござるか?」 「ははは、それはどうかなぁ?だから自分でプレゼント準備したようなものだよ」 ――だけど、誰かと一緒のクリスマスは久しぶり。 幸村が向きを変えて、うんしょ、と腕を絡めながら佐助と向き合う。そして、ぺたり、と胸をつけるようにしてくっ付いてきた。 「旦那とクリスマスも、お正月も過ごしたかったんだ」 「佐助殿…――」 間近になる幸村の瞳をじっと見つめていると、じんわりと胸が熱くなってくる。壊れ物を扱うように、そっと幸村の頬を包み込みながら唇を寄せる。 ――ふ。 触れて、離れて――深くは重ねずに繰り返していくと、幸村が佐助の背を撫で下ろしてくる。そのまま、ことん、と佐助の肩に額を押し付けて、はあ、と甘やかな吐息を吐いた。 「某、ずっと一緒でござるよ?」 「うん」 「佐助殿、某…寒いのは苦手でござる。だから…」 ぱく、と佐助の耳朶――耳たぶを口に含みながら、幸村が細かく吐息を吐き出してくる。じゅ、と音を立てて耳たぶを吸い上げられて、ぞく、と佐助の背に震えが走った。 「朝の続き、しよっか?」 幸村の耳元に掠れた声で囁くと、幸村は「暖めてくだされ」とか細く――たどたどしく告げてきた。 「旦那、メリークリスマス」 「めりーくりすます、でござる」 互いの服を、互いで脱がせ合って、肌を触れさせあって――翌日のことなんて考えずに、ただお互いを貪っていくだけだった。 了 091225/100101up |