Hot,warm,and sweet Christsmas:イヴのお話





 目の前で元就と政宗がくるくると踊っている――かと思うと、ゆらりと腕を動かしたりしており、観ていても楽しいものが出来上がっていた。

「Hey,Hey!!」

 背後では急拵えのサボテンの花達のダンスも見られる。きらきらとした姿は、夜の薄暗い中でもきらきらと光って見えていた。
 なんとか最後まで踊りきってから、皆が拍手をすると、政宗は「どうだ!」とばかりに胸を張ってみせる。元就はへとへとになりながら、ずるずると動いて元親の側の水をこれでもかという程に飲み干していた。

「なんか最近、こそこそしていると思ったら…こんな事を企んでたのか」
「YE〜S!なのに、幸村が花期になっちまったから、ポジションがずれてよ」

 ふう、と溜息を付きながら政宗が座り込む。それを見下ろしながら――口元にはチキンを頬張っているが――幸村がすまなそうに微笑んだ。

「ほら、俺たち花の精はよ、プレゼントなんて用意できねぇから…」

 ぽりぽりと政宗が自分の頬を掻きながら話す。だから何か喜んでもらえることをしようと、三人で頭を寄せ合って考えたのだという。政宗は目の前に用意されたチキンに噛り付きながら説明していく。
 因みにこのチキンは元親が注文しておいたものだ――更に言えば、ケーキも元親の趣味だったりする。

「一応、プレゼント交換じゃねぇけど、ご褒美用意しておいたぜ」

 元親がごそごそとホールのケーキを取り出す。ひとつは直径15cmほどのショートケーキ、そして後の二つは普通サイズのケーキだった。更の上にそれらを乗せて、元親は政宗と幸村の前に置き、一番大きなものを元就の前に置いた。

「ほら、約束のケーキ」
「…いんふるえんざに、かかる前の…覚えておったのか」
「当たり前だ。ホールで買ってやるって言ったからな」

 にしし、と歯を見せて笑う元親を見上げてから、元就はケーキに噛り付いていく。因みに政宗の前にはカシスとベリーのムースのケーキ、そして幸村の前にはチョコレートの掛かったザッハトルテだ。

「それにしてもこの苺美味しいなぁ」

 まったりしながら慶次がそんな事を話す。そして店内の電気を徐に全て消し始めた。

「慶ちゃん?」

 佐助が驚いていると、しい、と慶次が口元に人差し指を当てる。それが何の合図だったのか――幸村も、政宗も、元就も知っていたようで、それぞれが寄り合っていく。幸村がことんと佐助の肩に頭を寄せて、始まるでござる、と小さく呟いた。

 ――ほわ。ほわ。

 かすかに光る光の玉が、ゆらゆらと光り出す。それが何なのか解らないでいると、政宗が小十郎の腕によじ登っていった。

「あれは皆、花の精なんだぜ?」
「え…――?」
「夜になるとな、俺たちはよくこうして遊んでいたんだ」

 ふわふわ、と漂う花の精たちは、形のあるものも無いものもいる。それらが、ゆらめきながら出てくる。

「夜になれば、人も寝入る。それと同じで、俺たちも休むけど…その前に、少しだけ遊ぶんだ」

 政宗が子どものように頬を赤く染めながら話す。その仕種を見つめながら、小十郎は自分の首元に政宗を引き寄せて「綺麗だな」と呟いた。
 ゆらゆらと揺れる光は、外の電飾よりも淡く――そして彼らにしか見ることも出来ない、幻想的な光景だった。








→クリスマスのお話へ続く



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