クリスマスまでにしておきたい幾つかのこと





 近場のコンビニへと足を伸ばして、自動ドアを潜ると、側にあった垣根の前で政宗が青く――小さな背中を丸めていた。

「どうした?」
「何でもねぇよ」

 ぷい、とそっぽを向きながら政宗は口を閉ざす。だが俯いた口元が――下唇を噛み締めている姿が痛々しい。

 ――なんかあったな、これは。

 小十郎は溜息を付きながら、ひょい、と政宗の首根っこを掴むと自分の懐に収めて歩き出した。懐に入った瞬間、政宗はじたばたとしていたが、歩き出すと大人しくなっていく。

「――――…」
「もう街中はクリスマス一色だなぁ」

 小十郎が呟いてから、わざと息を吐き出してみる。すると、ほわり、と白い呼気が上がった。それを見上げながら、政宗はごそごそと身体の向きをかえて――小さな手で小十郎の首元にしがみ付いた。

「どうしたんだ?政宗」
「――垣根の奴らにからかわれた」
「ああ…見事に咲いていたもんな」

 コンビニの前には山茶花、寒椿、そしてポインセチアが植わっていた。それを思い出して小十郎はがさがさとビニール袋を揺らしていく。

「俺が、冬の花なのに咲けないのは、出来損ないだからだって…」
「馬鹿だなぁ…」
「――――…ッ」

 思わず呟くと、がん、とショックを受けた政宗が見上げてくる。起した頭が小十郎の顎にぶつかって痛かった。今にも大きな瞳を涙で潤ませようとしている政宗に、小十郎は信号待ちで足を止めると、指先で彼の頭をなでた。

「誰が何といおうと、お前は咲くんだろ?」
「う…まだ、だけどよ」
「遅咲きでもいいじゃねぇか。その分、皆が散っていく中で、華々しくいられるんだ」

 ――大器晩成でもかまわねぇよ。

 小十郎が取ってつけたように説明すると、政宗は涙を引っ込めて頷いた。そして、ふう、と外に向って呼気を吐き出す。小十郎の真似をしていることは一目瞭然だった。

「一先ず、クリスマスは…どうしたい?」
「うん?小十郎はどうなんだよ?」
「俺は…皆と楽しくかな。あとは、ゆっくりしたいくらいだ」
「――俺、居てもいいんだよな?」
「お前が居ないと意味がないさ」

 ――だから楽しもうな。

 歩きながら外の垣根のイルミネーションを楽しむ。政宗はイルミネーションの光にさらされながら、小十郎の首元にぎゅっとしがみ付いていった。











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