今年もあと少し 「今年はどうしようかなぁ…」 花屋の作業台の上で、慶次は頭を乗せて呟いた。ツリーは一応、生のもので飾るつもりだし、いくつか飾りも用意している。店頭に出すディスプレイを考えながら、オーナメントを選り分けていると、ころころ、と余っているのに気付く。 ――あ、これ…政宗たちの。 去年まで一緒だった花の精たち。その彼らに付けたオーナメントが手元にあった。それを再び箱に戻して、はあ、と溜息をつくと、慶次は小さなリボンを結び始める。 「慶次……寂しそう。それも、市のせい?」 「違うからね、市」 「市、何かした?」 「してない、してない」 作業台の上に、蒼みのかかったピンクのカトレアの、市が小首を傾げる。彼女に手元で作っていたリボンを付けてあげると、微かに口元が綻んだ。 「市、嬉しい」 「うん、似合うね、似合うッ」 指先で市の頭をなでていると、ブーブーと他からブーイングが起こる。そして、ふわり、と月下美人のかすがが作業台の上に降りた。 「贔屓はよくないな、前田」 「贔屓なんてしてないよぅ、かすがのだって作ってるじゃん!」 慌てて手元で白いレースのリボンを手繰り寄せると、かすがは市の側に座り込んだ。此処最近はどうも彼女達の存在のほうが際立っている気がする。 騒がしいのは変わらない。慶次はくるくるとリボンを手繰りながら、携帯電話を引き寄せた。 「どうせだから、皆でクリスマスやりたいなぁ」 そう呟きながら、電話を耳に当てる。程なくして、明るい佐助の声が聞こえてきた。 了 091108/091217 up |