政宗観察日記





 大抵寝る時には、本体に戻っているはずなのに、目が覚めるといつも枕元に政宗は居る。
 俺が目覚まし時計を止める間、動きを大きな青灰色の瞳でなぞってから、じっと此方を見下ろしてくるんだ。
 正直朝はどうにもぼんやりしている事が多い。だから手っ取り早く運動で目を覚ましている訳だが、支度をしている間も静かに俺を見つめている。
 たまに、のそのそ、と枕の上に飛び乗って、きゃっきゃ、と声を上げて遊んでいることもある。

「行って来るな」

 見上げてくる顔は、いつも何処か切なそうで、思わず指先で頭をなでていく。すると、嬉しそうに目を細めるくせに、俯いてしまうんだ。

「…い、行って来いよ…」

 ぼそり、と呟く声を聞いてから、朝の空気を浴びに外に出て行く。

「小十郎、お前毎日毎日、同じ生活で飽きねぇ?」
「別に。リズムが整っているほうが体調も良いしな」
「ふぅん?」

 鉢植えに水をあげながら、PCでメールチェックをしていると、退屈そうに鉢に寄り掛かって、足をぷらぷらさせている。

 ――俺と居て、こいつは楽しいのか?

 時々疑問に思うこともあるが、取り合えず聞かないことにした。ぽたぽた、と落ちてくる滴を拭いながら政宗に声をかけた。

「政宗、今日はどうする?着いてくるか?」
「ん?んー…そうだな。着いていってやる」
「じゃあ、車でいくか」

 髪の毛を拭きながら云うと足踏みしている――まったく、なんだこの可愛い物体は。本の少しで一喜一憂する姿が見たくて、彼を喜ばせる術を探している自分に気付く。

「小十郎…ッ」

 手を伸ばして、ぴょんぴょん、とその場でジャンプする。一生懸命に腕を伸ばして、ん、ん、と勢いをつけている姿がまるで子犬が抱っこを強請るようで笑いが滲み出てしまう。

「――ふ、お前…ホントに…」
「何だよぅ?」

 手を伸ばして持ち上げると、ぷく、と頬に空気を入れて膨れている。

「いや、可愛いなと思って」
「――――…ッ」

 指先で頬をなでてみたら指先にしがみ付いてきた。ぷにぷにした感触が気持ちよくて――まるでマシュマロを突いているような気分だった。

「Good Morning」

 ほんのりと頬を紅潮させた政宗が挨拶をくれる。挨拶は一日に欠かせない。

「おはよう、政宗」

 挨拶を返すと、こくりと頷く。仕種の一つ、動きの一つに、徐々に振り回されているような気がしてくるが、こんな小さな花の精の我侭くらい、いつでも叶えてやりたい。

 ――早く、咲かせてみたい。

 そんな風に思って着替えていると、空かさず政宗が「そのネクタイ、似合ってない」と突っ込みを入れてきた。確かに今日のスーツには合っていなかった。

 ――趣味も良くて困るもんだ。

 鏡に向かう俺の前に、腕組をした政宗が仁王立ちしている。ありがとな、と言うと直ぐに俯いた――照れなくて良いのに。











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