Flower Halloween!





「おい、お前ら、ちょっと来い」

 昼の休憩時に小十郎が元親と佐助を手招きした。呼ばれてデスクに向かう元親と佐助とは裏腹に、他の社員達は外に出て行く。

「何ですか、片倉さん」
「あれ、そういえば旦那見ませんでした?」

 きょろきょろと佐助が首を巡らせた。小十郎はぬっと腕を伸ばして佐助の首を引き寄せる。元親はからからと椅子を動かしながら一緒に顔を寄せていった。

「昨日なんだがな、政宗が何かごそごそやっていてよ…」
「うんうん」
「だから、あいつらに気付かれないように、一応用意しておいた方が良いと思うんだ」

 ――何を?

 首を傾げる佐助に、元親が「勘が悪いなぁ」とカレンダーを差し出した。それを見つめていても解らない――だが元親は佐助の前で、カレンダーの31日を指さしてみせた。

 10月31日。

「あ…ッ!」

 ――ばしッ!

 大きな声を上げながら佐助が気付くと、空かさず小十郎の平手が頭に降って来た。

「いったいなぁ、片倉の旦那ぁ…」
「でかい声を出すな、馬鹿」
「はいはいっと。じゃあ、この後、買いに行きますか」

 ちゃり、と元親が車のキーを指先で回す。そういうことなら、と佐助が後に続くと小十郎もまた席をたっていった。











 全く姿を現さないのは珍しい。声をかけても「後でな」と云い捨て、三匹はこそこそとしていた。小十郎と元親、佐助はそれに気付かない振りをしながらもコンビニに寄ってから元親の家へと足を伸ばした。
 部屋の中は白い家具で統一されている。その一角のソファーに腰掛けて、あれこれと話していると、途端にテーブルの上に躍り出てきた姿があった。

「トリック・オア・トリートッッッ!!!」

 テーブルの上には葉っぱ塗れになって、マリモみたいになっている元就、白い布を頭から被っている政宗、それに包帯でぐるぐる巻きになっている幸村がいる。
 もそもそと三匹は動いて、それぞれに手を差し出した。

「ほらよ、俺達からだ」
「え…ッ?」

 くすくすと笑いながら元親が大きな箱を開ける。すると空かさず佐助が三匹を纏めて掌に包み込む。

 ――どんっ。

 三匹の上から大きな物体が被さってくる。

「ふおおおおおおおおっっっ???何でござるか、これはッ!!」
「NOOOOOOOOO!!!壁が、壁が出来た――ッッ」
「――我らを閉じ込めるとは、愚劣な…」

 三匹三様の声が穴から聞こえる。その穴を覗き込んで、小十郎たちはくすくすと笑った。小十郎が代表して穴に向かって覗き込むと、三匹はぎゅうぎゅうになって穴に挟まっていた。

「ハッピー・ハロウィン。それ、食えるからな」
「え…――?」

 政宗が上を向いて小首を傾げる。すると元就が手を向けて、壁を崩した。

 ――ぱくん。

「美味であるな」
「ぬぁぁぁにぃぃぃぃ?」
「いざ、参るぅぅぅぅぅぅ!!」

 がぶ、と大きな口をあけて幸村が壁に食らいついた。すると容易に壁が崩れていく。そうして三匹で、きゃいきゃい、と良いながら食べ続けていると、のんびりと缶ビールを傾けた佐助が笑った。

「それにしてもバームクーヘンだなんてねぇ。考えましたね、元親主任」
「馬鹿野朗、バオウム・クゥフェンだ。発音には気をつけろ?」
「俺、ドイツ語苦手だったんです」

 ぶう、と佐助が唇を尖らせる。小十郎はバームクーヘンの入っていた箱を見て、ふふ、と笑った。

「政宗に、ぴったりなバームクーヘンだな」

 其処には「伊達バウム」と書かれていた。そうこうしている間に、三匹が真ん中の穴を食べ進めていく。それを眺めながら三人はほのぼのとしながら、寛いでいった。










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