日向ぼっこと花





 夏の日差しが差し迫った梅雨の時期だった。
 少しの日光に、慶次は顎先に流れ落ちる汗を拭いながら見上げる。

 ――暑いなぁ…ってか久々の晴れ間。洗濯してくれば良かった。

 連日部屋干になっている衣服を思うと、はぁ、と溜息をついてしまう。今は洗剤に消臭剤が入っているものを使っているから良いが、それでも時々湿った匂いに顔をしかめる事になっていた。

 ――あ、そうだ!

 ふと思い立って慶次はいそいそと店内に入った。するとレジの上で見慣れた三頭身の三匹が転がっていた。

「何やってんの、あんた等…」
「見て解らねぇのかよ、昼寝だ、昼寝」

 ひょこん、と頭だけ持ち上げて政宗が面倒くさそうに言う。横になって手をぷらぷらと動かす様が、どうみてもオヤジ臭い。
 その横でうつ伏せになって幸村が、ぷうぷう、と鼻提灯でも出しそうな勢いで寝ているし、さらにその奥では仰向けになって、綺麗に手をお腹の上に組んだ元就が、すうすう、と寝ている。
 慶次は上から彼らを見下ろしながら、ふ、と溜息をついた。なんて平和な光景だろう。

「昼寝って…――要するに、暇、なんだね?」
「煩せぇな、シエスタだ、シエスタ」

 ――同じことじゃないか。

 ころん、と政宗が背中を向ける。それを横目で見ながら、慶次が幸村の首根っこをつかんで、ぷらん、と持ち上げるが幸村は起きない。それどころか、涎が、だらーん、と流れている始末だった。
 次に慶次はレジの上の棚の鉢を持ち上げて抱え込む。よいしょ、と声を上げると幸村を鉢の上に乗せて外に連れて行く。
 そして今度はゆっくりと掌に元就を載せて、鉢を抱えて外にいくと再び戻ってくる。そして横になって背中を向けている政宗に尋ねた。

「で?どうする?」
「どうするって…何がだよ」
「政宗もお日様、見たいんじゃないの?」
「――――…」

 ころ、と政宗が身体の向きを変える。そして大きなくるくるした瞳で見上げてくる。

「あんた達、揃って日光大好き植物だもんね」
「解ってるんなら連れて行けよ」

 ――ぱたん。

 大の字になって政宗が言う。どこでも連れて行け、と威勢よく言っている姿が面白い。この天邪鬼、と告げてから政宗を掌に載せると政宗は、ちら、と左目を開けて慶次を見上げてきた。そして、ぴょん、と掌から慶次の肩に乗る。

「OH!眩しいぜッ。おい、慶次、幸村は午後には中に入れてやれよ」
「解ってるよぅ」
「元就の日光好きもな…しおれるぜ、この暑さだったら」
「政宗は?」
「――俺だって、焦げるのは厭だ」

 ふふふ、と慶次が笑うと政宗は、むっと口元を膨らませる。鉢を抱えて彼らのところにいくと、既に元就は目を覚まして「日輪よ!」と叫び、幸村は相変わらず丸いお腹を出して、ぷうぷう、と寝ていた。

「此処で良い?」

 少しの日陰のところに政宗を置くと、政宗はころんと鉢の近くに転がった。そして「ふう…」と溜息をつきながら瞳を閉じていく。

「おやすみ、皆」

 慶次が告げると、政宗が小さな手を、ひらり、と動かしていった。










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