誕生日を祝おう





 自宅に到着すると、政宗は早々に風呂を済ませて布団に横になった。嬉しそうに顔は始終、笑顔のままだ。

「全く、お前らにはしてやられたぜ」
「は」
「後で覚えてろよ〜?」

 言う言葉とは裏腹に政宗は幸せそうだ。それを横目で見ながら、小十郎は体にぎゅっと力を詰め込んだ。
 政宗は構わずにあお向けに倒れこむと、はあ、と溜息を付きながら瞼を落とす。

「そういえば小十郎…」
「――…」
「お前のもう一つのプレゼントって何だ?」

 問いながらも政宗は瞼を下ろしたままだった。その頬に、ふわ、と大きな手が触れていく。不思議な感触に、ぱちり、と政宗が瞳を見開くと、覗き込むようにして小十郎がこちらを見下ろしていた。
 だが小十郎の姿は三頭身ではない。花期の時のような――昔はその姿しか見たことが無かったが――実体に近い姿だった。

「小十郎、お前…」
「政宗様…」
「え?今、夏…お前の花期ってずっと後じゃ…?」
「今宵、一晩くらいは姿を保てます」

 ――直ぐに消えてしまいますが。

 無理しているのだけは解った。だが政宗は目の前の小十郎に、腕を伸ばすと強く彼の首元にしがみ付いた。布団から浮いた背に小十郎の手が、腕が絡まり、政宗の体を支える。

「何てご褒美だよ…小十郎」
「喜んでいただけましたか?」
「無理しやがって。後で本体の中で休めよ?」
「解っております」

 じわり、と視界を涙で歪めているのを悟られないように、政宗は小十郎の首筋に鼻先を埋める。

「幸せな、誕生日だ…小十郎、大好きだ」
「私もです」

 囁くようにして語りながら、そっと顔を寄せて彼の唇に触れると、後はただ互いの体温を感じていくだけだった。




 了




100811 up