rin-rin-Ring





 しゃらん、と音が鳴る。

「ん…――ッ」

 絡めた腕も足も、しっとりと湿度を伴っていく。絡めた唇の間から、くちゅ、と濡れた音が響いていく。何度も何度も重ねていくと、どちらとも境界が消えてしまったかのように痺れて仕方なかった。
 ずっと焦がれ続けて、触れるのを躊躇われてきた柔肌が、しっとりと掌に馴染んでくる。
 少し小さめの胸が、掌に収まって揉み上げるように動かすと、幸村の背中が撓り出していく。細い脇腹をなぞり、脚を持ち上げて開かせて、身体を滑り込ませて――初めての身体を開くのは容易ではないが、その過程さえも愛しくてならなかった。
 指先に絡まる粘液が、熱くてならない。柔らかく肉壁を広げながら佐助は、ふ、と吐息を吐いた。

 ――触ってるだけで、俺様、達きそう…。

 情けないことに、敷きこんだ彼女の身体が愛しすぎて、必要以上に興奮してしまう。

「旦那、もう…良いかな?」
「っ、――う、うむ」

 ぐ、と堪らずに自身を押し入れるように擦り付ける。すると、彼女がびくりと身体を揺らした。きゅうと引き絞った瞳から、ぽろ、と涙の小さな粒が零れ落ちる。

 ――うわぁ、可愛いッ。

 手に絡まる長い髪が、顔を背けるたびにシーツの上に波紋を作る。触れると熱い肌が、仄かな光の下では確認しきれないが、ほんのりと色付いていくのがわかる。
 佐助は、ふう、と吐息を吐いて、そして背中を弓形に曲げてから、はた、と思い出した。

「あ、ごめん」
「――?」

 ぱち、と瞼を押し上げて、敷きこんでいた幸村が瞳を瞬く。その間に佐助はがたがたと手を伸ばして、枕元に置いておいた箱に手を伸ばした。

「ちょっと待ってて」
「どうしたのだ?佐助…」

 ごそごそと動かす音に、幸村が首を起す。だがそんな彼女を押し留めて、佐助はへにゃりと眉を下げた。汗で濡れた額に髪が、ぺたりと張り付いている。

「やだなぁ、ちょっと見ないでてよ」
「――あ」

 上半身を起し始める幸村に、佐助は照れながら一つの袋を見せた。見れば四角い袋の中に、円形の窪みが出来ている――言わずもがな、それはコンドームだった。

「これ、付けなきゃね」

 ――だから、ちょっと眼、閉じてて。

 ぴり、と口で入り口を広げながら、佐助は再び幸村の脚を開かせる。膝の裏に手を添えて、ぐっと上に引き上げながら、器用に取り出したコンドームを装着しにかかる。

 ――がばっ。

「いい、いらないっ」

 佐助の首に急に腕を回して、幸村が彼の動きを押し留めさせる。急に抱き締められて佐助は瞳を見開いた――その一瞬だけ動きを止めて、それから幸村の背を支えながらも声を荒げる。

「な…あんた、何言ってんのさ?」
「いらぬから、そのままでしてくれッ」
「だああああああ、女の子がそんなこと言っちゃいけませんッ」

 かああ、と佐助の顔が徐々に熱くなっていく。純な彼女からそんな事を言われるとは思ってもいなかった。むしろ嬉しい反面、初めてなのに無理なんてさせられないとも考えてしまう。ぐるぐると思考だけが走り回っていると、ぐい、と幸村が自分の足を佐助の腰に絡めてくる。
 内心で「ぎゃああ」と焦っていると、幸村の方から佐助の顔に鼻先を摺り寄せてくる。

「佐助っ、良いから聞けッ」
「あ、うう…旦那ぁ」
「私はッ!」

 声をぴしゃりと跳ねらせて幸村が佐助の注意を引く。正面で見つめ合うと、しっとりと濡れた肌が、触れたところから融けてしまいそうだった。
 佐助は幸村の背を引き寄せながら、彼女の大きな瞳と、涙に濡れた睫毛を見つめていく。

「私は佐助の子を、産んでやるって約束した」
「――…ッ」
「だから…だから、それは要らぬ」

 付き合い始めた時の、彼女の言葉は其れだった。社交辞令かと一瞬でも疑っていた自分を恥じたい気分だが、それよりもずっと彼女が思っていてくれた事が嬉しくてならない。

「旦那、旦那…だん、にゃ…」
「佐助はここぞという時に噛むなぁ…」

 ぎゅう、と抱き締めて、細い鎖骨の上に鼻先を摺り寄せると、ふふふ、と笑いながら幸村が頭を撫でていく。

「大好き」

 言っていて、じわり、と目頭が熱くなった。こんな風に幸村と肌を重ねるなんて思ってもいなかった。
 焦がれ続けて、ずっと愛されていたことを知って、これ以上の幸せがあるのかとさえ思う。佐助は強く腕の中に幸村を閉じ込めると、好きだよ、と彼女の耳朶に囁いていった。









オマケのR18仕様です。ちょっと恥ずかしい。